新潟県長岡の近くの小都市で活動した宮嶋哲郎という画家の絵に、人気タレントエッセイストが感動するところから物語は始まる。彼女が書いたエッセイが大きな関心と若干の問題を引き起こし、それを掲載した雑誌の副編集長である橘が町を尋ねることになる。
一切中央に背を向け、地方で生活しながら、その土地の風物、人物を書き続けた「パルビゾン派風」の作風の隠れた作家。彼の未亡人や、その生活をサポートした人々と触れながら、橘はその作品に引かれ、その画集を作るというプロジェクトにのめりこんでいく。橘は現在の雑誌と同じ会社が経営していた美術専門紙の編集者だった。美術ジャーナリズムへの思いが残っている。
数少ない作品を束ねて画集にしようとする橘に、夫を天才として、自分の気に染まぬ作品を贋作とはねつけ作品の掲載を許さない未亡人智子の存在。
画集の出版とともに、生まれていく小さなバブル、周辺の人々の変化、そして最後に明かされる作品の真実。
松本清張風の出来事の深みのある読み応えのあるミステリーだった。
絵画というものの持つ魔力のようなものを面白く描き出している。円熟の筆力。
沈黙の画布 (新潮文庫)/新潮社

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