怪談というほど怖くはない。
40歳の脚本家が生まれ故郷の浅草で出会う奇跡の話だ。
風間杜夫演じるシナリオライターは、12歳のときに、寿司屋の職人をしていた父と母を交通事故で失った。仕事一辺倒で家族関係もうまくいっていない。
そんな彼が、ある夏、死んだはずの両親と出会う。寿司屋の職人だった片岡鶴太郎も母親の秋吉久美子も亡くなった当時の若々しい姿で、お互いの年齢の乖離を笑い合う。
12歳の時に失われた団欒がそこにはあり、親たちは、自分たちが死んだ後の息子の苦労を思いやりながら、その成功を喜ぶ。
不思議さを不思議さのままにして感情のリアリティを発揮するという映画性が発揮されている。
ただ、この幸福感には、代償があった。彼らとつきあえばつきあうほど、男の命が吸い取られていくのである。
両親と別れを告げる場面、今半の二階でのすき焼のシーンは哀切だ。
若く、美しい母親役の秋吉久美子が素晴らしい。
12歳のときに生き別れずとも、親子には必ずわかれが来る。両親ともに旅立った今、この哀切感は他人事ではなかった。
両親を失ったことの本当の意味をまだつかめていない。しかしそれが取り返しがつかないほどの空隙であるということだけはわかりはじめている。居間の両親の写真をじっと見ている。
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