広大な高原の草花を風が撫で、遥か彼方までその波紋が広がっていく。ここは星空ヶ丘、そのなだらかな地形からは想像しづらいが雲の上に位置するほど標高に広がる高原だ。この高原が星空ヶ丘と呼ばれているのは、太陽が沈み夜が訪れた時に空一面を美しい星々が埋め尽くすことが由来とされる。その光景はさながら、色とりどりの宝石を真っ黒な布に広げたようだ。
高原の夜は生ある者の気配がしないほどの静寂に包まれており、世界に自分しかいないような感覚に陥ってしまう。それが星空ヶ丘で過ごす全ての夜であったが、ある晩だけは違ったことが起きた。それが何もない高原で過ごす自分の人生を大きく変えたのだ。あの晩、静かな星空ヶ丘の夜、その静寂を切り裂く音が高原中に響き渡った。その音はまるで甲高い人の叫び声の様だったが、音の発生源は夜空から落ちてくる火の塊らしい。
火の塊は勢い良く高原の真ん中へ落下したようだった。その落下音と地響きは鼓膜をビリビリと振動させ、その衝撃の強さを物語る。耳の感覚が正常に戻った時には既に落下点へ向けて走り出していた。何もない日常に起きた変化への好奇心か、胸は高鳴り落下点へ向かう足は速さを増していく。ここから見ても分かるが、落下点は赤々と燃え、真っ暗な高原の中でその存在を主張している。落下点に到着した時点でも、落ちてきたそれは赤々と燃えていた。
陽が昇るまで燃え続けるそれを眺めていると、それは白い煙を噴き上げまとわりつく炎を吹き飛ばした。白い煙が晴れると、落下物の正体が鮮明なものとなる。鮮明となったそれは整った造形をしており、人工物であることが分かる。巨大な矢尻の様な形状で、左右均等な流線型が特徴的だ。こういった物というのは、何十年も前から見ていない。記録を参照して考察してみると、これは休眠用カプセルに類似した人工物であるといった結論に辿り着いた。