ホミン パラレル
暫く家を空けることもあり、チャンミンが韓国行きとユンホという俳優の話を母親にすると、彼女はユンホのことを知っていた。
チャンミンから聞いていた夢の男性がユンホにそっくりと聞いて驚き、「羨ましい」と笑って言う。
ケーブルテレビで出演作を何作か見てファンになったらしい。
サインを貰って来てくれと強請られている内に、チャンミンは次第に怖がる自分が馬鹿らしく思えて来た。
「ねぇ、チャンミン。
彼があなたみたいに、夢の中の男性の生まれ変わりなのかは分からないけれど、これはチャンスだと思わない?」
「チャンス?」
サインを強請る話から突然真面目な話に変わり、チャンミンは戸惑いつつも母の話を聞いた。
「その夢があなたの前世の記憶だとしたら、あなたはその彼を守りたくて、男性に生まれ変わりたいって願ったわけでしょ?」
「そうなるね」
「実際あなたは男として生まれて来た。そして、夢の中の恋人と同じ顔をした男性が現れた」
「うん」
「なら、その彼の力になれば、あなたの前世での願いは叶うのではないかしら?」
言われて、思わずあっとチャンミンの口から小さく声が漏れた。
「何度も夢に見るのは、余程の後悔があったと思うの。
それを解消する為にユンホさんと縁が繋がったのなら、怖がらなくても良いんじゃないかしら?」
母親の言葉に、子供の頃、夢にうなされた後に母の明るく、冷静な声にいつも慰められて来たことをチャンミンは思い出した。
「確かに、そうだね」
母の言葉に、不安に思っていた気持ちが少し解消する。
一体何の意味があるんだろうと、悪い方にばかり気持ちが行っていたが、母の言う通りかもしれないとチャンミンは思った。
何より、カルマを解消する為に人は生まれ変わると言うのなら、
彼の力になることで、それが解消するのかもしれないと思えた。
「でも、あれよ、『命をかけて守る!』とかそういうドラマみたいなのは止めてね」
母の冗談めいた明るい言葉の裏には、チャンミンを心配する気持ちが見て取れる。
「母さんも知ってると思うけど、臆病だから大丈夫だよ」
格闘技も何も出来ない自分が、そんな行動取れるわけないとチャンミンは笑う。
「確かに、あなた昔から喧嘩とか全然しないものねぇ…」
「平和主義者なんだよ」
「ものは言いようだわ」
クスクスと母親が笑った。
「ありがとう、母さん」
感謝の気持ちをチャンミンが伝えると、「どう致しまして」と母親は言う。
「真面目なのはあなたの良い所だけど、あまり思い詰めないで、楽しんでいらっしゃい」
「うん、そうするよ」
チャンミンの中から不安な気持ちは消えて、初めて行く自分のルーツの国と映画撮影の現場への期待に満ちていた。
