日本語の表記には「ず」と「づ」のように同音で異なる文字が存在します。
会話では区別がありませんが、文章を書くとなると使い分ける必要があり、やっかいなことがあります。
以前、別の記事で「〜しずらい」という誤りについて触れました。
今回は、「少しずつ」と「少しづつ」について考えてみたいと思います。
はじめに、皆さんは「少しずつ」と「少しづつ」のどちらを使っていますか?
また、どちらが正しい表記と認識しているでしょうか?
正解は「少しずつ」が正しい表記です。
「〜ずつ」は、他にも「1つずつ」のようにも使いますよね。
では、「づつ」はなぜ不正解とされているのでしょうか?
実は、「づつ」の表記も歴史的には使われていた時代がありました。
旧仮名遣いと呼ばれる、古語の表記では「づつ」はごく普通に使われていたのです。
中学や高校で習った古文では、「きょう」を「けふ」、「ちょうちょう」を「てふてふ」と表記していましたよね?
これらと同じように、「ずつ」もかつては「づつ」でした。
第二次世界大戦後、内閣告示で現代仮名遣いが定められました。
つまり、今も使われている一般的な文章の表記に改められたのです。
このとき、「ぢ」「づ」は「じ」「ず」と表記することになりました。
したがって、「少しづつ」ではなく「少しずつ」を使いましょう、とルール化されたわけです。
ここで、おそらく多くの人が疑問に感じると思います。
「それなら、『づつ』も間違いとは言えないのでは?』と。
その通りです。
「少しづつ」は古風な表記ではあるのですが、日本語として完全な誤りではありません。
むしろ、戦前戦中生まれの方の中には「少しづつ」の表記を使い続けていることもあります。
かつては正式な表記だったわけですし、歴史的には「ずつ」よりも「づつ」のほうがずっと長く使われてきたのです。
ですので、「少しづつ」を使ったとしても無教養だとか、知識がないと思われることはないでしょう。
「少しずつ」を用いたほうが好ましい場面としては、ビジネス文書や公文書のように正式な文書を作成するときです。
正しい・誤りというより、内閣告示で定められたので従う、ただそれだけのことなのです。
このように、言葉は時代とともに変化し、表記もある時期を境にルール化されることがあります。
「少しづつ」は誤った日本語ではありませんが、ルール上は「少しずつ」が一般的とされている、と覚えておきましょう。