第142話 「ケーキ -(ケーキ)」
「あぁ・・。」 桃子さんはどっちつかずの曖昧な相槌を打ったあと、雰囲気を変えるかのように明るく言った。
「あっ、そうだ、お茶淹れてくるよ!増田屋の先の気取ったケーキ屋知ってんだろ?ド高い店でさぁ、ケーキが一個800円もするとこ!今までは摩耶に行ってもらってたから知らなかったけどさぁ、買い方もなにやらうるせーオキテがあってさぁ、七面倒くさいったらありゃしねーの!キミには奮発して特別に二個買ってきたぜ!キッチン来てどれが良いか選んでくれよ、摩耶、悪いな、ちょっと待っててな」
『うん、すきなの選ばせてあげてね!』
摩耶は猫を抱っこしたまま笑顔を見せた。
正直言ってアタマが真っ白な今、ケーキなどどうでもよいことだった。そんなことよりも摩耶の病状についてもっと確かめておきたいことがいっぱいあった。半ば強引に引っ張られてキッチンに来た僕は、
「あの、桃子さん、姉さんの・・・」
と切り出した。その途端、彼女の右手で乱暴に口をふさがれた。
桃子さんは小声で「喋るな!」と言ったが早いが、居間に届く大きな声で、「ほらー、すげーケーキだろ?フルーツが落っこちそうだろ?どれが良い?」と叫びながら予め用意していたらしい大きなメモ用紙にマジックで何やら走り書きを始めた。
(つづく)