「ジュジュツ -(呪術)」




香りが自分の記憶と直結するとはよく言われることだが、漂ってきた現世の摩耶の“ミル”の香りは僕の彼女の数年間を・・・いや、千三百年の歳月を遡って、まるで今ここですべての出来事が起こっているかの如き錯覚をもたらした。


おばさんは続けた。


「あのね、妹の髪を結う係の女性がいるんだけど・・・梳いた(すいた)髪を片付けるときに、買収された下働きの子がそっと抜けた毛を隠し持つの。多分そういうモノを呪術に使うんでしょうね・・・。ハッキリとは見えないんだけど・・・呪いたい相手の名前を記した木片みたいなものとか、人型に切った紙みたいなものが見えててそれに細工してるみたい・・・


・・・うーん・・・邪悪な空気が支配してる場面を見るとね、なぜか灰色っぽい霞というか霧というか、煙状のものが漂ってきて見えづらくて仕方ないのよ・・・


あのね、変な言い方なんだけど、ちゃんとした呪術師っていうか、まじない師っていうか、社会的に認められたそういう職業の人は当時居たみたいなんだけど、でもこの人は違うわ・・・うーん、裏呪術とでもいうか、多分密教か道教を少し齧(かじ)って道を外れた妖術師とでもいえば解るかなあ・・・そんな感じなの。オマケにこの二人、通じてるわよ!つまり兄さんに囲われる前から関係があったみたい。どうやったら兄さんの気が引けるのか、この男の入れ知恵だったのねー。




でね、その女はもの凄い形相で呪文を唱え、妹の人型に切り取った紙みたいなものに・・・針かな?・・・そう、針みたいなものを突き刺してる!目や首の辺りを執拗に刺してるの・・・すごい妖気・・・いやぁ・・・不気味!・・・・」

(ええっ?針を突き刺すだって?)


僕は自分の脈拍が上がり、動悸が激しくなるのをハッキリ感じた。つい何日か前に見た穴だらけの摩耶の写真が脳裏に浮かぶ・・・そうだ、そうだった、あれも目や首が穴だらけだった!


何なんだ?偶然なのか?いや、これは絶対に偶然なんかじゃない!疑念が確信に変わるとき、おばさんが再び話し始めた。





(つづく)