仕事に行く時に御乗車くださる常連さんに月2~3回は当たる。
愛想が良くて礼儀正しい御客様で、話しやすいので、つい、自分の方から話しかけてしまうことが多かった。
だいたい、配車がかかると、こちらが先に到着し、1~3分ぐらいで出てくる方。
いつも笑顔で挨拶してくれるので、つい、友達感覚になってしまった。
今朝の1本目、その御客様の配車に当たった。
ちょっと道が混んでいて、御客様のほうが先に出てタクシー到着を待っている、という状況になった。
睡眠不足の、疲れ切った、ゲッソリした顔だった。
あれが、本当の顔なんじゃなかろうか。
行き先は、聞かずとも、わかっている。
僕は、挨拶以外は、沈黙して運転した。
映画『ダイ・ハード 1』で、送迎リムジンのドライバーが、お喋りで、ブルース・ウイリスが、
『ジャスト・ドライビング!マン!』=黙って運転しろ、というシーンが冒頭にある。
サラリーマン時代の後半、責任者の地位になって仕事量が増えてから、出勤時は、いつも憂うつな気分だった。
駅のベンチで電車を待つ間、眠れもしないのに、目をつぶって、じっとしてる。
そんな時、月に何度か夜勤明けらしき男性2人組が、ベンチで飲酒してるシーンに出くわすことがあった。
近い場所に座ると、『おはようございます』なんて、酔ったハイテンションの挨拶をされるのが苦痛で、彼らがいるとわかるや、ホームの最先端で、電車の到着を待った。
その日・その日、どうなるかわからないタクドラと、固定給で働く人の、出勤時の気分は全く違うことを、忘れていた。
タクドラには、やらねばならない書類仕事も、パソコン入力も、会議もない。
ただ、運気や自分の勘まかせに、車を転がすだけだ。
反省。