友だちから、柳田邦男さんの講演会のチケットをもらった。

彼女の義妹さんが、

いのちの電話のボランティア活動をしているとのこと。

友だちを含めて4人で、会場に向かった。


私にとって、柳田邦男さんの本は忘れられない思い出がある。

「ガン回廊の朝」という本を読んだのが最初だった。

その本に、知っている人が登場していたのだ。

1974年、再生不良性貧血で亡くなった妹の主治医だった。


まだ独身の若い先生だった。

仕事が終わってから、妹の病室に来ては、

付き添いをしている私と3人でいろいろなことを話した。

千葉大病院で外科をやっていたのだが、

考えるところがあって、内科に移ってきたということだった。

その内科も、納得のいく専門とは思えないようで、

これからどうしようか迷っている最中だという話をしていた。


妹が先生にセーターをプレゼントしたいと言い出した。

Mサイズかなぁ、Lサイズかなぁ?という話をした時に、

「Mだときついけれど、Lだと袖が長過ぎちゃうんだよ」

ということで、3人で大笑いをしたことがある。

プレゼントをする前に、妹が亡くなって、それっきりになっていた。


その先生が“ガン回廊の朝”に登場したのだった。

放射線の専門医になって、

画像の解析に目覚ましい活躍をしているようだった。

やっと自分の進む道を探し当てたのだなぁと、

自分のことのように嬉しかった。

妹が望んでいたセーターをプレゼントできなかったことが、

ちょっぴり心に残ったままなのである。


その後、柳田邦男さんの本はほとんど読んだ。

講演を聞きながら、たくさんの思いが溢れてきた。