「ゥ、ゥ、ゥ、ゥ、ゥ、ゥ、ゥ、・・・」

 

6月某日、日曜の昼下がり。

ある中高年の嗚咽が響き渡る。こぼれ落ちる涙。

 

小学生になる息子が心配そうに声をかける

しかし、眼球はニンテンドースイッチを見たままだ。

 

「あ”ぁ、、グォッ、、はぁ、はぁ、う”ぅ、、ぴ〜や〜!」

 

最後のぴ〜や〜は誇張したが、

中高年の嗚咽は声にならない声へと変わっていた。

 

 

悲しくて泣いているのではない

汗が眼から出ているわけでもない

ガッキーが結婚したからでもない

近所の「おぎわら」さんを、ずっと「はぎわらさん」と呼んでいたことに

気づいたからでもない。

 

「ぽっぽや(鉄道員)」を観ていたからだ。

 

前回「北の国から」に触れ、

なんとなく、

北海道が舞台で、古き良き昭和を感じれる

映画が観たくなった。

 

「ぽっぽや」は、

雨の日も雪の日も駅に立ち続け

ついには娘と妻の死に目にも会えなかった

愚直な昭和の男の物語だ。

 

 

高倉健が主演を努め、

若き日の広末涼子も出演している。

 

ちなみに、私の妻は

「ヒロスエが嫌いだから観ない」

と、ごちていた。

 

「広末涼子が可愛かった」

という、

喉元まで出かかっていた紛糾の種を、

私はそっと隠した。

 

仕事は、我慢なのか

私のようなナウな現代人からみると、

「そこまでしなくても・・」

「有給とって休みなよ」

「プライベートを犠牲にしすぎじゃん」

と、言いたくなる。

 

何を隠そう、

ファンの方には申し訳ないが、

私も途中まで、

「昭和特有の我慢くらべやなぁ〜」と、

鼻くそをほじくって観ていた。

 

仕事に対する想い

しかし、

小さな駅の駅長の高倉健は、こう言う。

 

「機関車が、戦争に負けた日本を立ち直らせ、引っ張るんだ」

「それを信じて、今まで働いてきた」

 

彼が、鉄道員という仕事を通して、

日本を立て直し、引っ張ると信じて働いてきたという想いを知る。

 

毎日見て見飽きているであろう線路を見て、

この線路が、日本の未来に通じていると思っていたのだろう。

 

小さな田舎の廃線寸前の駅

乗客は数人の老人だけだ。

 

そこの駅長の仕事は、

小さな仕事だったかもしれない

地味な仕事かもしれない。

 

けど、彼の「想い」は、

何よりも大きかった。

 

仕事って、そういうものなのかな

 

地味でも、日が当たらなくても、

どういう想いでやるかが大事なのかもしれない。

 

今日から、

地味な毎日の仕事を

大きな愛を持ってやろうと思う。

 

家族を守ることだって、

立派な想いだ。

昭和ど真ん中の父とは話が合わなくなったが、

彼も子供の為に、という想いで

仕事一辺倒でやってきたのだろう。

その想いは、

私も受け継いでいきたいと思う。

 

若き日の、志村けん

ちなみに、若き日の志村けんさんも出演していて、

彼の名演も光る映画だ。

唯一の映画出演と聞く。

素晴らしい演技だった。

 

九州の炭鉱から、北海道に仕事を求めてやってきた

臨時工が彼の役どころだ。

 

酒に酔って炭鉱夫と喧嘩をするシーンで登場し

最後は落盤事故で亡くなってしまう。

 

「飲んだくれて、堕落して

大義を持たず

目先の利益を求めるようなことは、

しちゃダメだ。」

 

天国の志村けんさんの、そんな声が聞こえる気がする。

 

ブログでも詳しく書いています。