多細胞システムの研究は再生医療への”橋渡し” | 医薬翻訳のアスカコーポレーション 社長ブログ

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大阪北浜、東京田町にオフィスを持つ医薬・バイオ分野の語学サービス会社 アスカコーポレーション社長 石岡映子のブログ。

ASCA Bulletin 12号には、神戸の理化学研究所 多細胞システム形成研究センター(理研CDB)も紹介している。理化学研究所といえば2017年には創立100年を迎え、全国に8つの主要拠点をもち、職員約3500人、バイオテクノロジーから物理学まで多数の科学者を擁する日本有数の巨大研究機関だ。“世界一のコンピュータ”「京(ケイ)」、“世界最高の性能を誇る大型放射光施設”「SPring-8(スプリングエイト)」も理研の施設。


CDBはその理化学研究所の1つである。神戸の震災の後、神戸の再生を牽引するプロジェクトの一つとして神戸のポートアイランドに設立された。一流の研究者を全世界から呼び寄せ、グローバルな研究所としてスタート。多くの人材と研究が生まれていった。当時はこのエリアに人もまばらだったが、今でこそ大学や企業誘致が進み、人が増え、多くの研究機関が軒を連ねている。


STAP細胞事件でネガティブなイメージがついたものの、発生・再生科学の研究は世界に誇るレベルだ。「多細胞システム」とは身体を構成する器官の形成や維持などの生命現象の仕組みを意味している。受精卵から細胞が分化し、組織や器官を形成していくメカニズムの研究などを行い、臨床応用や薬剤の開発につなぐのがこの研究所の役割である。


2013年、iPS細胞を加齢黄斑変性治療のために患者に移植する臨床研究となった高橋政代氏の網膜再生医療研究開発プロジェクトの話題は記憶に新しい。2014年9月には自己由来のiPS細胞を患者へ移植する臨床研究を世界で初めて実施され、今年の10月には術後1年の良好な経緯が報告された。故笹井芳樹氏らと長年研究を続けてきたことの成果、まさに“translational”、”橋渡し“の研究である。


その他、器官誘導研究チームの辻孝氏らは、歯や毛包の再生を目指す研究も行っていて、かなりのレベルに至っているという。Bulletinの記事には、マウスに毛が生えている写真が掲載。


ベンチャー企業の育成や神戸市などとの連携も進んでいる。「神戸アイセンター」ができれば再生医療と臨床応用が可能にもなる。


職業体験やサイエンスカフェ、セミナーなどのユニークなイベントも盛りだくさん。巨額の税金が投入されている。神戸市民だけでなく気軽に立ち寄ってほしい。
http://www.cdb.riken.jp/