ASCA 皆で本を翻訳した! | 医薬翻訳のアスカコーポレーション 社長ブログ

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大阪北浜、東京田町にオフィスを持つ医薬・バイオ分野の語学サービス会社 アスカコーポレーション社長 石岡映子のブログ。

ASCAを設立するにあたって、”出版”にかかわる翻訳も夢のひとつだった。

サラリーマン時代、出版翻訳は東京が市場だし、儲からないから、と止められていた。

自分たちの作品を世に出したい、漠然とそんな希望を持っていた。


そんな折、以前営業した日経BPの編集部の人が、思いがけない仕事のチャンスをくれることになった。

「がんの民間療法」というタイトルの本だ。

3月末に入稿し、翻訳作業に与えられた期間は1ヶ月、5月に監修が入り、7月には出版されるという。


ASCAの翻訳者の1人が自ら患者として民間療法を受けていた。

民間療法って何?今こそ自己免疫や、サプリメントも一般的になったが、その当時はよくわからず、患者である彼女が情報を集めながら、4月、その出版翻訳に集中した。

1人1章、全員で取り組んだ。

出版翻訳に欠かせない、スタイルの設定、読みやすさへの工夫、「がん」「癌」「ガン」の使い分けの定義づけや専門用語の表記など。その当時、皆で考えて取り組んだ。


納品は新幹線で。車中で最後のチェックをしたのを忘れない。

その本が7月初旬、会社の前の書店に新刊として目立つ場所に並んでいた。

翻訳原稿のほぼそのままだった。


数年後、その時の民間療法を受けていた翻訳者が転移により他界した。まだ40歳だった。

棺の中にその本を入れさせていただいた。

手術後キーボードを打つ手が上がりにくい、って言いながら翻訳も頑張ってくれていたのに。


彼女の分も頑張っていい仕事をしたい。

確かに出版翻訳はコストが見合わない。

それでも年に数冊、専門書ではあるけれど出版翻訳はさせていただいている。


翻訳本だのに読みやすい、そう言ってもらえるのが目標だ。

小さなASCAの大きなサービスのひとつだと信じている。