【解説】支払いと費用計上 | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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(以下、すべて3月決算を前提として)

「ホームページを更新します。3月に支払いましたが、完成は5月の予定。3月の費用にできますか」。

 これはダメでしょう。代金は支払っているものの、ホームページ完成という役務の提供を受けていません。具体的な特定の役務に基づいて対価を支払う取引ですから、費用計上は役務の提供を受けたときです。払えばなんでもOK、などという判断基準は税務にありません。

 なお、ホームページ作成費用が資産なのか費用なのかという論点もあり得ます。買い物機能など複雑なプログラムが配置されている場合などは、ソフトウェア計上を検討する必要がありますが、通常の会社ホームページくらいであれば費用処理で問題ないでしょう。

「3月に、来期である4月から翌年3月までの駐車場代を1年分支払いました。支払った3月に費用計上してよいですか」。

 こちらはOKです。駐車場を借りるのは来期ですから、役務の提供を受けていないという点では先のホームページと同じ。でも、結論が180度違うのはなぜでしょう。

 結論は、前払費用の性質です。ホームページ制作は、上にも書いた通り、「具体的な特定の役務に基づいて対価を支払う取引」。一方の駐車場を借りる取引は、継続的に同じ役務が提供される取引です。よく「等質等量」と説明されますが、平たく言えば、「ダラダラと続く役務提供」ということ。家賃、保険料、信用保証料などが典型例と言われます。

 前払費用について、企業会計原則注解5の定義を見ておきましょう。「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価」。提供されていないのですから、原則、支払った当期の費用になるのではなく、いったん「前払費用」として資産計上しておく。これが会計の要請です。定義からすれば、継続的に借りている駐車場代を1年分支払う取引は前払費用に該当しますが、「継続して役務の提供」を受けないホームページ制作費用はそもそも前払費用に該当しません。単なる前払金でしょう。

 そのうえで、法人税基本通達2-2-14を見ると、一定の前払費用について、支払ったときの費用(損金)処理が認められています。その要件は、1)1年以内に提供を受ける役務であること、2)支払ったときの費用処理を継続していること。

 たとえば先の例で、来期4月から3月の駐車場代を2月に支払ったとすると、2月の費用処理は認められません。理屈ではなく事務処理の手間を考慮した特例ですから、許容範囲は1年。役務提供時期が1年を超えてしまう場合は認められないのです。また、前期まで期間按分していたのに、今期だけ費用処理して、来期はまた期間按分、などという処理も認められません。利益操作ではなく、事務処理の手間を省くのが目的ですから、利益が出た今期のみ費用処理などという処理も認めないのです。

 前払費用なのか、単なる前払金なのか。支払い時期と費用計上時期を考える場合、まずはその整理から考える必要がありそうです。




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