【閃き】税負担だけが判断基準ではない | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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 相続が発生した場合に、まず無条件に優遇されるのが配偶者です。長年(かどうかはともかく)、ともに家庭を築き、財産や家族を守ってきた夫婦ですから、その1人が亡くなったときに、残った1人を優遇するのは当然でしょう。配偶者の場合、1.6億円までの財産を取得しても相続税の負担はありません。

 では、夫婦に同居している長男と別居している次男がいる場合、夫が亡くなった相続でどのように対応すればいいか。16日の日本経済新聞には、次の相続まで考慮して財産を分ける必要があるとの解説が掲載されていました。次の相続とは、子ども側から見て、父の死亡が第1次相続で、次に起きるであろう母の死亡が第2次相続です。自宅の土地5000万円、建物1000万円、預金3000万円で、財産の合計が9000万円という想定でした。

a 1次相続(父の死亡)で、母がすべての財産を取得すれば、上記のように1.6億円以内ですから、相続税はかかりません。次に2次相続(母の死亡)が発生したとき、長男と次男が4500万円ずつ取得して使える特例を使ったとすると、相続税負担は320万円だと。

b 一方、1次相続で、母と長男が自宅の2分の1ずつ(3000万円ずつ)、次男が預金3000万円を相続すると、相続税は16万円。2次相続で、母が相続した3000万円の自宅を長男と次男で2分の1ずつ(1500万円ずつ)取得して特例を使うと、相続税は0になる。

 1次相続と2次相続の負担合計は、前者なら320万円で、後者なら16万円。必ずしも配偶者の優遇を使うのが得策ではなく、1次+2次で考える必要があるとの提言です。

 計算上は、その通りなのだと思う。でも、bの方法を税理士としてお勧めできるのかといえば、できないでしょう。

 長男は両親と同居して、それなりの面倒を見ていた。次男は同居せず、自分の生活を営んでいた。その状態でbの相続をすると、両親の預金はすべて次男が取得し、最後は自宅の4分の1まで次男が取得することになる。そのような財産の分け方を長男が納得するでしょうか。

 もちろん、1次+2次で考えるべき、という警鐘の意味での事例なのだと思います。それにしても、あまりにも現実離れしすぎ。百歩譲って1次相続で預金をすべて次男が取得するのなら、2次相続で次男は相続放棄するのが道理でしょう。それぞれの生活と、価値観と、1次相続と2次相続の間にある時間差とを加味したうえで、どのように財産を分けるのか。相続税負担を考えることは重要ですが、相続税だけが判断基準と考えてしまうのは危険という事例として、位置づけたいと思います。




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