同監督がどんな経歴かについては前回書きましたが、
実は、いまいち今回の決定に関して素直に喜べない、
心に何かが引っ掛かっている感じ、が拭えないのです。


それについては後々になりますが、まずその前に自論を一つ。

実は「監督業」に関して自論があり、それは
「本当に優秀な監督なら、ヨーロッパ内で常に指揮し続けている筈」
というものです。


南米よりも資金面で良い環境にある欧州には、選手も監督も、色々な
人材が集まってきます。ブラジルで活躍した選手が移籍金や高年棒を
求めて欧州に渡る傾向があるのは、周知の通りです。
※勿論、欧州から南米に行ったり(戻ったり)ということもあります。


そのような環境では国籍にはある意味寛容で、優れた人材は必ず
「~人」という枠を超えて結果を出し続け、富と名声を得られる
欧州に残る傾向があります。


その意味でザッケローニ氏は、欧州、中でも有数の結果に厳しい環境
であるイタリア一本で、ビッグクラブも含めて監督業を続けてきた
という時点で、優秀な監督であることは間違いなかろうと思います。


逆に、例えば2002年のワールドカップで日本をベスト16に導いた
トルシエ氏に関しては、違う傾向があります。


彼はフランス人で、かつてはフランス国内で指導をしていましたが、
やがて(フランスの影響がある)アフリカ系にシフトしていき、日本
代表監督に就く前には南アフリカ代表監督をしていました。


日本をワールドカップで開催国の名に恥じない結果に導いたことが
間違いない彼の実力であるならば、その後は世界中が注目する監督に
なっていてもおかしくはありません。

いや、そうなるはずです。


ですが、その後の経歴はカタール代表、マルセイユ、モロッコ代表と
やはりあまり一流チームには縁が無い様子。マルセイユでは1シーズン
指揮を執りましたが結果はリーグ5位ですぐに離れる。


個人の志向もあるかもしれませんが、本当に結果を出す優秀な監督で
あるならば、むしろ本人どうこうではなく、競争の厳しい欧州の
クラブや協会が見逃す筈がありません。


まして世界中の誰もが注目するワールドカップで、初開催、しかも
それまで決勝トーナメントにすら行ったことの無い国をそこまで導いた
わけですから・・・。


というところまで含めて考えると、あれは結局のところ監督の素質と
いうよりは、日本のホームアドバンテージの影響が一番大きかった、
というのが本当のところの彼に対する世界の評価でしょう。


いやむしろ世界各国からみれば、開催国は決勝トーナメントに進出する
のが「当たり前」。ないしは、できて当然。できなかったら、監督が
相当悪い、という位の視点が一般的なのではないでしょうか。
(今回南アフリカは残念でしたが、、)


話がそれましたが、一方で、例えば欧州の第一線で活躍する
モウリーニョ氏のような人が、いきなり日本代表の監督を務める、、
なんてことがあるでしょうか?

もしそんなことがあるのだとしたら、日本協会が彼の家族を人質に
取ったと考えるべきです。笑


ということで、クラブ単位であるにせよ、イタリアという厳しい環境
での長年の経験は、それ自体が「少なくとも無能な監督では無い」
ということの証明にはなります。


なら良いじゃないかと思われるかもしれませんが、まだこれからです。


一つの注意すべきポイントは、彼に代表監督の経験が無いということ。


もうひとつは、イタリア一本のあとブランクを経てユベントスの監督
を短期間務めたその後というキャリアについて。


そしてもうひとつ、日本協会との契約内容、です。


最初の点は、善し悪しがあります。

代表監督は、継続して選手を指導できるクラブチームとは違い、
ある程度の期間の中で活動はポイント的に間を空けて継続していく
ものです。

シーズンごとのリーグ優勝のように明確な目標とモチベーションが
得にくい状況(おそらく選手自体の意識は高い)ですし、
環境面のサポートやプレッシャーも異なるはずです。


06年ワールドカップの日本代表監督だったジーコ氏に至っては、
監督経験が無い状態での就任でした。
(日本協会はその点は気にしないのか・・?)

とにかく、「初」であることは、前向きなチャレンジであることは
勿論ですが、同時に、不安要素でもあります。


これまで彼の実績について延々と述べてきましたが、
今度は、その実績は少し当てはまらない部分が出てきます。
そうなると、果たして彼は大丈夫なのだろうか?という疑問が
少なからず出てくるのです。


次の経歴についてですが、欧州での指導経験が長いといっても、それは
・イタリア国内一本であり、選手は各国人を扱うにせよ、自身は
 初の海外チャレンジとなること
 つまり、環境適応能力には実績が無いこと
・監督業での目覚ましい活躍は90年代のことであり、近年は目立った
 成績がないこと
・その上での2年間のブランクと、それを経てシーズン途中からの
 ユベントス監督という、あくまでリアクション的な就任経歴だったこと
・さらに、同氏の年齢は57歳であり、監督としてはまだまだ先が
 あること
というような視点があります。


つまり、初の代表監督就任ということと、尻すぼみ気味の自身の経歴
とを掛け合わせると、何かこれまでのマイナス気味の環境を変えて
新たなチャレンジをしたい、厳しい環境から逃げて楽な所で成果を
出したい、という気持ちの表れなのかなと考えられます。

会見では本人もチャレンジという表現を用いていましたし。
(同時に、もしそうだとするならば、それでいいのか日本協会、、、
という不安もありますが。)


そして最後の契約条件ですが、
2年間ベースで、オプションでプラス2年、というもののようです。


つまり、当然ですが日本に合う合わないも含めて様子を見た上で
続けるかどうかを判断するというもので、勿論それは分かりますし
よくあることだとも思います。

が、問題は決意の度合いとして、最初から日本を次のワールドカップ
で前回以上の結果を出すことに焦点を合わせているわけでは必ずしも
ない、ということです。


それが記者会見での目標に関するコメントで、日本の次のワールド
カップの目標はまず出場、という部分にも出ているような気がします。


現段階ではまだ就任が決まったばかりで、チームの状況も何も知らない
ところで具体的な目標など出しづらいのはわかります。頭が切り替
わってないのかもしれません。


でも、すでにベスト16に2度進出、しかも4大会連続出場をしている
日本にとって、目標がまず「出場」というのは謙遜しすぎだし、
就任が決まったばかりでの会見であり、指導のやる気に満ちている
状態なのであれば、もう少し鼻息荒く「前回同等は」という位まで
言うのは、むしろリップサービスとして必要な範囲なのではないで
しょうか。


それから、契約の流れですが、日本協会はこの度有力候補として考え
ていた監督からはことごとく断られてしまい、
(技術協力でスペイン協会と提携するという話は何だったのか…?)

イタリア人に路線変更してからスムーズに進んできたものの、基本的
には先方のリードで交渉が進んだようです。


日本代表監督というオファーに興味を持ってもらえ、前向きに話を
進めてくれた点には、同じ日本人として好感が持てます。
少なくとも他の監督達は日本代表監督という仕事に対してまったく
眼中にないという姿勢を見事に示してくれたわけですから…。
(でもそれは現実的な世界の視点なので仕方ないですが)


しかし、以上までの要素をトータルで考えると、、
どうも日本代表監督という仕事は、
彼の閉塞感漂う現状のキャリアの転換期に訪れた、視野を広げ経験を
積みイタリアあるいは初の他国で再び活躍するための一つの下積みの
機会でしかない、
という風に考えられるのです。


別にそれが悪いことだとは思いませんが、もしそうだとしたら
日本協会の求めるものとは次のワールドカップまで継続して
代表を指導し代表のレベルを底上げして前回以上の成績をもたらして
くれることであるのに、この契約は果たしてその目的を達成できる
ものになるのでしょうか。


その部分を踏まえた上での意識の擦り合わせはできているのか。

各候補に断わられ続け、いつまでも決定できずに代表戦を迎えてしまい
メディアを中心とした協会手腕の批判にさらされる中、決定を急ぎ
本来の目的を見失ってしまってはいないだろうか。


時期を急いで無理にでも決めようとすることは、代表監督に限った
ことではなく、何にでも当てはまり得ること。


勿論、将来のことはわかりませんし、同氏の意思や協会との交渉の
中身もわかりません。


ただ、目先の体面ではなく、日本サッカーの将来のために、一つ一つ
の選択が本当に的確になされるべきであると思います。


過去にイタリアで成功を収めた一方、いくつかのクラブでシーズン
途中解任、あるいは終了後に解任(と言わないまでも、契約非更新)
という実績を持つ同氏の肩書きの単純な上塗りで終わってしまわぬ
よう、この決定に対して、本人の努力は勿論、日本協会としても全力

でサポートをして、日本サッカーのレベル向上を一生懸命達成して

欲しいと願うばかりです。