上州土産百両首

平成26年1月の浅草を観たのではと思ったのですが、

私が観たのは、平成22年8月の「第八回亀治郎の会」@国立劇場大劇場でした。8/18~22公演の千穐楽を観て、会場の熱気に驚いた記憶があります。

私が観たのは巳之助ではなかったのが残念。…浅草の巳之助=牙次郎きっと良かったでしょうね。


亀治郎の会、浅草歌舞伎、今月の配役は、

正太郎 亀治郎(当時)→猿之助→

牙次郎 福士誠治→(浅草)巳之助→(今月)菊之助 

みぐるみの三次 亀鶴→亀鶴→隼人

金的の与一 渡辺哲→男女蔵→錦之助

隼の勘次 門之助→門之助→歌六

勘次女房おせき 吉弥→吉弥→萬次郎

宇兵衛 寿猿→寿猿→錦吾

宇兵衛娘 守田菜生(三津五郎娘)→梅丸(莟玉)→米吉


「亀治郎の会」では歌舞伎以外の俳優も出演し検索してみると冒頭に板前の修行中であった正太郎がまだ前髪の牙次郎に助けられるシーンがあったようです。このシーンがあると、正太郎が単なる幼馴染み以上に牙次郎を大切に思う気持ちや最後の場面の二人の思いに厚みが出るのかもしれません。

背景に満月も使われて、その15年後の再会と更に十年後の満月と響き合うという演出も良かったでしょう。

最初が明るいシーンではなかったのはおぼろ気に記憶していましたが、細かなことはすっかり忘れていました。(笑)


記憶に残っていたのは、板前となった亀治郎の正太郎を亀鶴の三次が追いつめて正太郎が殺しをしてしまうところと最後の正太郎と牙次郎のシーンの切なさ。亀鶴の三次の憎々しさが上手いので余計に亀治郎の正太郎の悲劇が際立ったのだと思います。


今回の獅童の正太郎は、全体に兄貴に徹しており、

菊之助の牙次郎は、人の良い気やさしい弟分。どんなに堅気で頑張っても稼ぎも働きも半人前、そんな牙次郎を何とかしてやりたい一心から、二百両を貯めたのに、後一歩のところで全てが水の泡に…。😢獅童の持ち味なのかそういう男の哀愁がよく表現されていたなぁ。菊之助の牙次郎は、とぼけた雰囲気が意外な感じで良く。(確かに上品だけれど)最後には「自訴したことにしてくれ」と隼の勘次(歌六)を説得する姿が力強かった…正太郎は弟のように思っていた牙次郎に救われます。亀治郎の会の演出を思い起こすと正太郎は、牙次郎の無垢な心にいつも助けられていると思えます。


満月のもと、手を取り合って軽く正太郎と牙次郎、自訴に出向くために歩いて行く二人なのですが、どのような未来が待っていようとも、切ないけれど幸せなのかもしれません。いつかまた、猿之助と巳之助で観たい気がします。