夜の部「助六由縁江戸桜」~児太郎の揚巻~


今年は特別な南座顔見世でした。落ち着いてブログを書きたいなぁと思っていたら、年を越してしまいました。

何と言っても児太郎が初役で揚巻を勤める「助六由縁江戸桜」しかも成田屋十三代目團十郎の襲名披露公演で。平成25年6月の歌舞伎座で当時海老蔵の助六で福助が揚巻を勤めた時以来の成駒屋の揚巻という想い…等もあり。😢

襲名の前から成田屋の一座に加わった児太郎が、襲名興行で全国を巡り、後半の一番の見せ場となる南座顔見世です。配役が決まった時から、ずっと楽しみにしていました。今年は夜の部のみ。妹を連れて行きたくて1回、そして見届けるために千穐楽にもう1回。昨年は母が亡くなり南座はお休みしたので今年は2年分。そんな意味でも特別でした。

揚巻、何となく児太郎には合うのではないかと思っていましたが、期待していた通り、初役として立派な揚巻だったと思います。

松の位の太夫の風格、大きさ、色気や艶は、最初の道中で充分に発揮されていたかな。特に堂々とした大きさが、児太郎の持ち味。歳を重ねれば色気も更に自然に感じられるようになるはず。

花道での酔態と「私がこの様に酔ふたは…」からの長台詞とホホ、ホホホ…というあの大きな笑いがただ風格とか色気ではなく豪奢な感じがするのが、私は成駒屋らしいと思います。

本舞台に来てからの「助六さんと逢うからは、仲の町の真ん中で踏まれようが、手にかけて殺されようが、それがこはうて、間夫狂いがなるものかいな」のキツク言う感じは五代目の言葉通り。児太郎のニンだなぁと思いました。そして「モシ意休さん」からの悪態の初音。「…喩えて云はば雪と墨」までで客席が湧き、「硯の海も、鳴門の海も、海と云う字は一つでも深いと浅いは客と間夫、サア間夫がなければ女郎は闇、暗がりで見ても、お前と助六さん取違えてなるものかいなぁ」(何て詩的な魅力に満ちた言葉なのでしょう)での笑いアハハハ…まで。ここでは何故だか福助の揚巻を思わせました。間夫を命掛けで愛する意気地が観客を惹きつける力強さ、それが艶やかに溢れているからでしょうか。ツンと澄まして意休の脇をすり抜けて引っ込むまでがあって、二度目の満江との出が生きてくる。今度は、淑やかな嫁のふんわりとした美しさ。意休が来るので助六を裲襠に隠したり、助六が飛び出して意休の刀が友切丸と気づきいきり立つところでも宥めたり、後半は恋する女の淑やかな雰囲気が魅力的でした。

千穐楽には、本舞台の前半かなり力が入っていたかなぁと思いました。(初音の見得の辺りで煙管がカランと転がるような音がした気がする)でも全体としては、豪奢で風格のあるすてきな揚巻でした。

また、並び傾城に芝のぶ、揚巻付き番新、巻絹に梅花の姿があることが心強い、と同時にジーン😢とします。

特に千穐楽は花道横の席だったせいか、今まで見たことのないほど梅花さんの帯が震えていた。先代芝翫、福助、児太郎と三代を支えてきた梅花さんの想いなのか、あんなに緊張した梅花さんを見たことがなく。またまた😢なのでした。梅花さんの足元を近くで見ていたら、そこには良い意味での歌舞伎役者の年輪があって、たぶんこの姿忘れられないなぁ😢と思ったのでした。14~24日(18日休演)の10回の揚巻、どんなにか名残惜しかったことでしょう。いつの日にか襲名の公演で揚巻を観る日までずっと見守って行かなきゃと気持ちを新たにしたのでした。





蛇足

千穐楽の「助六由縁江戸桜」は色々、ハプニングがありました。嫌なハプニングではなくて、何だかほほえましい思い出になりそうな。①始まる直前の幕間に金棒引きの金棒が倒れた(?)のか揚幕から音がした。②白酒売り十郎の扇雀さんが珍しく台詞が飛び、助六の團十郎さんが助け船。③梅花さんが袖の梅をあの裏梅の湯飲み🍵に入れるのに何故だかとても手間どった。


千穐楽の口上では仁左衛門さんが新團十郎のこれからをくれぐれもお願いしたいといつになく強く話された、先代十二代目のこともあってなのでしょうか。😢


全く別件ですが、最近、傾城など足を白塗りにする拵えを白粉にせず白いタイツ?ストッキングにするのは何故なのか。その方が効率的なのだとは思うけど、何か寂しい。