児太郎くん(と勝手に親戚のおばちゃん目線になります。🙇)がずっとやりたかったお舟。久々の女形の大役で期待していた七月❗
結論は、とっても良かった❗こういう一途な娘役、合っていると思います。

児太郎くんが尊敬する「梅枝兄さん」のお舟は、一途ながら哀切を極める感じでした。(令和元年12月歌舞伎座)この時うてなを演じて、「お兄さんのお舟をよく見たい」と言っていた児太郎くん、今回の初役は梅枝さんのお父様、時蔵さんに習ったらしい…。

前半の義峯(九團次)に一目惚れするところ、最初の「ここは宿屋ではござんせぬぞえ」から、引戸をそっと覗いてのはっと心を奪われるところ。その後、すっかり舞い上がって招き入れるも家の中が散らかってるぅとか、えー一緒に入ってきたあの娘は誰?とキッとし、妹と聞いてちょっと安心する等前半の娘らしさがおきゃんで。白湯を下さいと来た義峯さんに、もうすっかり夢中になり言い寄るところ、それがパワフルなのが児太郎くんらしかった。その反応ぶりに一々「まじかよ。この娘、参ったなぁ」感がハンパない義峯(九團次)なのだけれど、お舟はそれを全く意に介さずぐいぐい迫る娘の作り方も児太郎くんならてはで良いと思いました。
渡し守(頓兵衛=男女蔵)で、強烈なキャラクターの極悪非道なお父さんと美しく純粋な娘が、矢口渡(今の多摩川の辺りらしい)に住んでいるのも何だか不思議な雰囲気だなぁと。この家のお母さんはどこ行っちゃったんだろうという気もするし。この不思議さが福内鬼外(福は内鬼は外=平賀源内)さんの感性なのか。でもこの普通の義太夫狂言とも違うような濃さがこの狂言の魅力だなぁと思いました。
さて、猛烈アタックのお舟と義峯がのぼせるように気絶して、うてな(廣松)がやって来るところ。(この名前もステキ)廣松くんのうてなは美しく、しかも癪を起こしているにも拘わらず、義峯さんの現状(色香に迷ったか、やれやれ)を冷静に分析し、新田家の御旗を掲げるしっかり者な感じで良かったです。
ここへやって来る下男の六蔵(新十郎)さんが御旗の件を見て、さては新田義峯と気づき討とうとするので、お舟は何とかして義峯様を逃がさねばと思い六蔵には女房になるからなどと言いくるめ頓兵衛の元へ行かせる…。

この後、頓兵衛が真っ暗な我が家に帰って来て、二人の身代わりに寝ていたお舟を床下から突き刺して、お舟の述懐。義峯さまが兄の仇の娘と分かっては…(ホントは全くそんな気持ちはないプンプン)父頓兵衛とは違う心を示せば来世こそは夫婦になろうと言われたと言うお舟ですが、本心はお舟の気持から…。白馬の王子様に心奪われながらも芯の強さで義峯様を救いたい❗と一心。
父頓兵衛(男女蔵)がしつこく迫ってきても必死に諫めるお舟。その必死さに南座で見たお三輪の時のような迫力を感じました…。頓兵衛の最後の方は、褒美欲しさの強欲さだけというよりは、殺意の塊みたいな迫力がありました。あの矢口渡しという立て札をスパッと切ると煙が上がるのは、合図ののろしなんだけど、あれも何だか頓兵衛のとんでもなさを強調するような不思議さがありました。合図の太鼓を叩くところ、児太郎くんの熱が凄かったぁ。あの川にせり出した家が舟になり突き進むかのような、お舟の情念が轟くような太鼓。木戸が開けて逃したい一心。それと相まって頓兵衛が舟でこぎ出しその首を射抜かれるから余計に盛り上がります。頓兵衛の首を射抜く矢は、義貞の霊が射ったもの。平成27年吉右衛門丈が国立で通しの神霊矢口渡をやった時は、新田義貞の霊で錦之助さんが登場したのでした。

久しぶりに女形の大役を見られたのだからいいのですが、またお舟が大変なのは分かるけれど、ついでにめ組の鳶にも紛れちゃったらと思ったりして。廣松くんも入ってたし。ウインクしのぶさんが歌舞伎に出るのに比べたら、全然フツーではないかと。達陀にも出てたんだし。もしかしたら、凄くカッコよくて新たな魅力かも❗なーんて思ったのは私だけでしょうかね。爆笑