「當世流小栗判官」を観た翌日辺りから、歌舞伎座三部、一部、二部、成駒屋の巡業と次々に公演中止のニュース。7月の三連休で観劇を予定していた人は多かったでしょうに、本当にお気の毒です。パンデミックの終息を信じて、日々大切に観劇しなくては…。

「藤山寛美三十三回忌追善喜劇特別公演」も11日~14日までは休演となりましたが、15日から再開。再開後2日目の公演を見ました。

「愛の設計図」
商店街から流れてくる三波春夫の「世界の国からこんにちは」、こういう商店街があったなという感じ。中小企業「大崎工務店」の事務所のソファーとか制服のスモックを着た事務員とか、万博で高度経済成長真っ只中の昭和。中卒叩き上げの現場監督を渋谷天外。その監督の世話になった知人の息子で大卒の建築士藤山扇治郎。あるあるな昭和の設定が、今では懐かしいです。

「藤山寛美 偲面影」は、何しろ登場するだけで何だか可笑しく楽しくなる。天性のコメディアンだったのだなぁと、60歳で亡くなられたのは本当に残念。

「大阪ぎらい物語」
こちらは、関東大震災後の大阪船場の老舗の木綿問屋。夫亡き跡、1人で大店を守るおかみのおしずを大津峰子、そのおしずの弟で後見人に林与一。おしずの心配の種、ちょっと気の弱い長男が西川忠志、気は優しいがちょっと変わり者の妹千代子が藤山直美でした。昨年10月に観た「太夫さん(こったいさん)」の世界のように、こちらも昔の関西の大店ってこんな風だったんだろうなぁと。使用人も沢山いて、家族のようで。
冒頭が、火事見舞に手料理やおにぎりを巨大な重箱に詰める場面で、何が入ってるんだろうとオペラグラスを覗き込んだりして楽しみ。
手代の秀吉と幼なじみのように育った千代子が秀吉と結婚したいと言い出して、秀吉は帰され、亡くなったお父ちゃんは、言うことが聞けないなら車引きにでもなれと言ったからと、千代子は車夫になり母に反抗。間に入って千代子を説得する叔父(林与一)との関西弁のやり取りが絶品。与一さんのTwitterによると、毎日変わるところもあるようで。今風に考えると、千代子が言うことは、腹違いのお姉さんを差別するなとか、乳母のおばちゃんの借金は免除してやり~とか、番頭はんにそろそろ暖簾分けしてやり~とか、兄さんの東京進出を叔父さんはバックアップしてやり~とかすごく真っ当な感じ。大改革の要求を全て通し最後には秀吉との結婚もとなります。おしずは千代子がずいぶんしっかりと皆のことを考えているのに感心。何とか結婚も約束されて千代子は、おしずを膝枕して母の苦労をねぎらって終わます。
最後に直美さん一人の口上では、寛美の名付け親が、花柳章太郎であり、祖父の藤山秋美が新派の俳優でもあるので、現在の劇団新派は本家だと思っているとの話が印象的。
直美さんの絶妙な話術を全く違う現代劇で観たいなぁ、新しい分野にも飛びだしてほしあたなぁという気もしましたが、寛美さん亡き跡、ここまで頑張って来られた思いも十分伝わって来ましたよ。