世界的な金融危機の中で麻生総理が解散を先送りしたとの報道がなされています。確かに今回の世界的な金融危機は過去に例がないものであり、実体経済に与える影響はこれから明らかになるので今は政治空白を作るべき時ではないかもしれません。

しかし、同時に来年9月の衆議院議員の任期満了時まで選挙を先送りしたとしてもその時点で経済の状況が好転している可能性も左程高くないでしょう。それほど、今回の不況は根が深いと考えるべきです。

世界的なベンチャーキャピタルのセコイアキャピタルが最近行った会議に参加した知人から聞いた話では今回の不況からの回復は大変長いものになると彼等は認識しているそうです。出来るだけ固定費は削減しすべての支出が最後の支出のつもりで支出しろとの発言が出ていたそうです。

ご案内の通り、米国の消費は上昇する住宅価格に依存して増加してきたので、住宅価格の下落は消費の大幅な落ち込みにつながります。それが世界的に伝播し、自動車産業や電機産業等国際競争力のある我が国企業の製品の売り上げも落ち込みます。同時に中国をはじめ新興国の景気も落ち込むのでそうした国向けの輸出も落ち込むことになります。従って、外需が牽引する日本経済も厳しいものになることが予想されます。

世界同時不況とも言える現下の状況は大きなショックを政治の世界にも与えます。

選挙の先送りは長らく政権与党の座にあった自民党の分裂をもヒョットしたら引き起こす事態にもなりかねません。我が国同様、戦後長い間政権党の座にあったイタリアキリスト教民主党は冷戦構造の崩壊と軌を一にして解散しました。マフィアとの癒着等様々な腐敗の指摘がされても一貫して政権党にいた同党も世界秩序の変化と共に瓦解しました。地政学上我が国周辺には中国や北朝鮮も存在するので、同じことは当時の日本には当てはまりませんでしたが、今回の金融危機は冷戦構造の崩壊と同様のショックを日本の政治に与えます。解散先送りは自民党崩壊の序曲となるかもしれません。