3月に仕事を辞めて、借家を引き払い某市に引越しをした。

今は某家に世話になっている。

 

毎日が拍子抜けするくらい静かで平穏だ。

「これでいいのか?」と思うくらいに。

 

悪い癖だ。

これでいいに決まっている。

某家の人たちは、嫌味を言ったり、怒鳴ったり、不機嫌になったり、テーブルをひっくり返したり、暴力を振るったりしない。

息子にそう言ったら、

「それ、普通だから」と言われた。

普通なんだ。(笑)

 

夕食の準備が遅くても、ご飯が炊きたてでなくても、おかずが一品しかなくても、某家の主人は怒らない。

足りないときは、自分で冷蔵庫にあるものを追加して食べている。

昨日の朝は自分で目玉焼きを焼いてパンに乗せて食べていた。

片手で乳児を抱いて、だ。

嫁は何をしているのか?

なぜか罪悪感が湧いてきて、謝ってしまいそうになる。

いやいや、それはこの家族のことだから。

わたしには関係の無いことだから。

 

夫の元から脱出して、1年半になろうとしている。

日常の中で、あちこちで、夫がわたしにつけた刻印を見つける。

 

今日はいくつかのサイトで住所変更をした。

まだネットがうまく使えなかった頃、夫にすべて設定してもらっていた。

パスワードにはどれも「ばば」とついている。

 

わたしの名前+ばば+任意の数字

 

面倒なのでそのまま使っているが、これが夫がわたしにつけたスティグマでなくて、なんだ。

 

何気ない暮らしの中で、わたしは夫を絶えず意識してしまう。

夫のいない暮らしは、わたしを完全に自由にはしない。

 

平穏の中に不安を見出そうとするわたし。

夫の消えない刻印。