「うさぎー!次これ運んで。」
「はーい。」
母親に言われ、忙しく動き回る彼女。時折俺の方を見てはにっこりと笑う。
「ばかうさぎ!これも頼むぜ!」
「うっさいわね!!それに、おねー様と呼びなさいよー。」
悪態をつく弟を睨み付け、あっかんべーをだしてる彼女の姿は、いつかの未来の娘とのやり取りを思い出させた。
「おい、うさぎ!衛くんの飲み物なくなってるぞ!」
「もうパパったら、目の前にビンを置いたじゃない!あたしがお酌するって言ったら、自分でするって言ったの、覚えてないの?」
既にほろ酔い加減の父親は、上機嫌で娘に声をかけた。返事をする彼女は少し不機嫌に受け答えしていた。
「もう、今日の主役は私達なのに、皆酷すぎよー。ね、まもちゃん。」
一段落した彼女は、当たり前のように俺の隣に座った。
俺は幾らか緊張していて、笑顔を作るのがやっとだった。
「さあ、用意できたわよ。」
食事の終わった食卓を素早く片付け、母親が手作りのケーキを、彼女が皿を並べてくれる。
「衛くん、コップ出しなさい、ほれほれ。」
「あぁ~、お父さん。僕が注ぎます。」
シャンパンのビンを差し出され、俺は慌ててコップを出した。すぐにビンも受け取り返杯をする。
「衛さんって、お酒強いんだね。パパなんかよりしゃんとしてるや。」
けらけらと、笑いながら彼がケーキを取り分けてくれた。
「慎吾!パパは、嬉しいんだ。こんないい彼がうさぎの、うさぎのー。」
間極まった様子で涙ぐむ父親をみて、母親が近寄り声をかけた。
「もうパパったら、今日はうさぎの二十歳の誕生日よ。それに、衛くんが来てくれた、めでたい日なんだから。泣かないの!」
「うおーーー!」
その言葉に、一層涙が止まらない。
「あーあ、ごめんね、まもちゃん。パパお酒も入ってるから。」
「いや、大丈夫だよ。」
父親の心境の複雑さは、俺も何となく分かる気がした。
それに家族の絆をなんたか感じ胸の奥が熱くなる。
「家族っていいもんだな…。」
意識をせずに出た言葉が、彼女の耳に届いたようで机の下で手を握ってきた。
「もう、まもちゃんも家族だよ?」
その言葉に温もりと恥ずかしさを感じて、俺は顔が赤くなるのがわかった。
「もー。早くケーキ食べようぜ!!」
両親と姉カップルの雰囲気に呆れ顔の弟君は、しびれを切らしたように叫んだ。
「そうね、じゃあ、今火を付けるから。」
「慎吾、電気を消しなさい!」
「ほーい。」
蝋燭に火が灯り、ケーキの文字が浮かび上がる。
☆バースデーうさぎ♪㊗婚約おめでとう☆
「皆、ありがとう♪」
そういうと勢いよく火を吹き消した。
「衛くん、うさぎをよろしくね!」
「バカ姉貴を頼むな、衛にいちゃん!」
「……。ううっ。」
三人三様に彼女の事を俺に託してくれている。
「こちらこそ、よろしくお願いします。必ず幸せにします。」
ありきたりな言葉しか返せないが、これが本心だ。俺は深々と頭をさげた。
「まもちゃん!!ありがとう!」
彼女も俺の大好きな笑顔で答えてくれた。
「うおーーー!今日は、とことん飲むぞー!!な、衛くん!!」
「はい!おとうさん。」
「もう、パパー、ほどほどにね。」
「俺これもらおー!」
「あ、それは私のよー!返しなさいよー!」
彼女の家族に受け入れられた嬉しさと気恥ずかしさで、父親に勧められるまま飲んだ俺はその後の事は余り覚えていない。
次の日、彼女に照れながら呆れられるのは別の話。
~あとがき~
うさ誕、二十歳の婚約バージョン。
イメージは、うさぎ、短大二年。衛、社会人一年目。
卒業後に結婚する予定で、誕生日に両親に挨拶に行ったていです。
挨拶部分はスッ飛ばしてます。
衛さんに家族は居ないから、結納とか正式にせず、こじんまりと家族で祝う感じです。
酔っぱらった衛さんはうさぎちゃんをどれだけ好きか語ったんだとおもいますよー。
あまり、落ちがなくすみません。
ハッピーバースデーうさぎちゃん!