セミ!おいっ!セミ!!くそっー!!

…どんどんセミが消えていく

今日も道端で胴体を半分食われたセミに遭遇した

蟻か?はたまた、猫などの動物の仕業か?

はっ!…

お前は今週僕の家の前で鳴いていたアブラゼミ!

くそっ…

涙が止まらなかった

セミほどではないが、僕もけっこう泣いた

セミを忘れるため、セミへの思いを断ち切るため僕はピンサロに来ていた

出てきた女の子はミユという子だった

あまり可愛くないなーと心の中で思いながらもとりあえずお願いした

ミユちゃんは首にキスマークがたくさん付いていた

ミユちゃんはこの店で働いていて幸せなのだろうか

キスマークは誰に付けられたものなのだろうか

そんな事は最初の数分だけ考え、あとはずっとセミの事を考えていた

数週間後、僕は近所で1人飲んでいた

店を出た後、ゲームセンターに入った

セミのゲームなんて無いよな?

もうセミの事は考えたくないぞ

良かった、たぶん無い

普通に格闘ゲームをやろう

隣の台にホストが座った

ゲームセンターによく居る職種、ホスト

そのホストは女の子同伴だった

よく見たらミユちゃんだった

ホストはミユちゃんそっちのけでゲームに夢中だったが、ミユちゃんは笑顔だった

僕はけっこう長いことゲームをしていたが、ミユちゃん達もまたずっとゲームをしていた

その間ミユちゃんは、ずっとゲームを眺めているだけだった

ミユちゃんに気づかれても嫌だなぁと思っていたけど、彼女は僕なんかには全く気がつかなかった

家に帰って考えた

キスマークはたぶんあのホストに付けられたものだろう

ピンサロで働いたお金をホストに使っているのだろう

もしかしたら、あのホストは彼氏なのかもしれない

でも、もしかしたら、ただ遊ばれているだけなのかもしれない

ミユちゃんは幸せなのだろうか?

そもそも本名は?年齢は?

今日も人々は色んな事情で色んな仕事をする

幸せなんて人それぞれで、それはきっとセミにも言えるのではないかと思う

一週間という短いスパンで命を落としていったセミ達、ご苦労様