20525鹿児島県選手権、怪物中井くんのぶっちぎり優勝で興奮する会場で、気になる選手を見つけた。

鹿児島市の川畑くん。

年齢は33歳とある。

セカンドコールで呼ばれたので、審査員は、トップ3圏外と判断したのだろうが、僕はトップの中井くんに匹敵する筋量を持っていると見た。

しかも、バランス良く、どこにも欠点のないつき方、だからこそトップと比較してほしいと思ったのだが。

このセカンドコールの三人は、左から川畑くん、田代選手(ちなみ誠選手のにいちゃん)、堀内選手。

左の川畑くんを見てほしい。

九州で頂点を極めた篠田くん以上のバルクである。

まるまるして、力も強そう、これは凄い重量を扱える筋肉であることがわかる。

”つき方に”全く欠点はない。

フロントから見ていこう。

この惚れ惚れする大腿部からカーフ。

脚間に”できがちな”隙間のない筋肉量。

腕も逞しい。

巨大過ぎて肩幅が狭く見えてしまうのがマイナス。多分審査員はこのシルエットを欠点と見た。

多分意識できていないのだろうが、広背筋が巨大なので、腕を上げても逆三角形。

サイド。

大胸筋が薄く見えてしまうほどの三角筋と上腕、バランス良く発達した大腿部も良いね。

バック。

ラットスプレッドも問題なし、他の二人もいいのだが、その二人の背中が薄く見えるくらい厚みがある。

ただ、このバックダブルバイセップス、誰かに見てもらうと良い、片方だけ肩甲骨を寄せ過ぎ。

背筋全てが厚みも深みもあるのに勿体無い、ここでマイナス評価が出る。

アブアンドサイ。

悪くはないのだが、寸胴を”表に出して”しまう。

脚も力が入っていない。脚のセパレーションを見せたまま決めて、それから腹直筋に意識して、かつ身体に僅かに捻りを入れるべき。

ここでも勿体無い、これがトップ三に食い込めなかった原因でもある。

来年の優勝に一番近い、いや九州でももっと上に行ける素材である。

いかに見せるか、魅せるか、有り余るバルクを生かして駆け上ってほしい一人。

さて、田代選手が、僕が見る限り過去最高の仕上がりで望んだが、何せ、非常にクセのあるポージングをする、ひと昔ならこれも個性と終わるが、今は、若手を始めとして、基本ポーズはしっかり取れる、取れないといけない時代、せっかくの仕上がりが勿体無い。

ベテランには誰か助言できない時代は終わった、いや、ベテランと言っても僕より一回り以上若い。

まだまだベテランこそフィードバックすべきである、と辛口に言わせていただく。

九州選手権の”前座”に行われた鹿児島選手権。

本来、前座なので、それほど期待は”できない”ことが多い。

県選手権で優勝しても、クラス別では通用しても、オーバーオールの九州選手権では、箸にも棒にもかからないことがある。

名簿からは、ま、昨年優勝の福地選手かな、という勝手な予想だった。

さて、ラインアップしてみると、最後の最後に出てきた中井選手に全ての観客の視線が釘付け。

審査員も、その彼を何度も観ている、見つめているのがわかる。

ちなみに、中”居”ではなく、中”井”(どうでもいいかもしれないが、、)。

彼を昨年、九州クラス別で見た時、でかい、でも、密度も足りない、何せ脚がね、ちょっと、という印象だった。

178センチもあるので、平均身長近いモコモコの選手と比べると、立体感もない、な、頑張ってね、という感じ。

それが、今回は、そう、モコモコモンスターとして仁王立ちしている、舞台の袖で。

当然、彼中心に審査は進む。

順番に見ていこう。

フロントリラックス。

仁王立ち、27歳にしてこのおっさん顔負けの貫禄、良いねえ。

顔も小さく、まさに10等身の今風の体型。

昨年優勝の福地選手の密度には負けるが、ハード感バッチリ。

すごいなこの上半身。

バランスのいい、反対側の前畑くんもビルダーの鏡みたいなシルエットとポージングだが、それすらも霞む。

ダブルバイでも厚みを失わず、器用なバキュームもしっかりとって、広がりも失わない。

サイドチェスト、これ凄い重量感。

大胸筋、三角筋の丸みはもちろん、腕、惚れ惚れします、ヒゲ爺は感動。

前畑くんのバランスの良さに比べ脚の後面の弱さが目立つが、上半身の凄さで吹っ飛ばしてしまう。

サイドトライセップス。

まだデビュー二年目で、この安定感。

広い肩幅をうまく傾けて厚い胸郭をより立体的に魅せるこの憎さよ。

最近の若者は、センスも良い。このポーズ、簡単そうでなかなか難しい。

頭部からカーフまでうまく螺旋系を描いている、ここで勝負あり。

バック、写真ではうまく取れていないが、とんでもない厚みと深み、惚れ惚れする。

ラットスプレッド、丸めがちになる癖がある選手が目立つが、しっかり広がりを保つところも良いね。

臀部から大腿への緊張感も保っている。

最後、アブドミナルアンドサイ。

前畑くんの旨さが光るが、背の高い選手が陥りがちな腕をバンザイした時、厚みも広さも無くしてしまう欠点をうまく、捻りで隠す、これ、彼は彫刻のセンスがあるのかもしれない、などと見ていた。

で、結果は、圧勝。

前畑くんは2位、昨年優勝の福地選手は、3位。

僕は40年近く鹿児島選手権を見てきたが、過去最高の優勝者と思う。

ちなみにこの後、午後から開催された九州選手権、中井くん5位でした、僕は3位でも良かったと思う。

比較審査が、シンプルすぎたのが残念。

とにかく怪物誕生の鹿児島選手権、来年の九州選手権、彼が脚をどう鍛え抜いて出てくるのか、楽しみでならない。

前畑くんもまだ20代、末恐ろしい。

福地選手、最近の若者はポージングが上手いし、かつ基本に忠実。

あれだけの質感を出せる才能がある、もっと上に行きたい、”ならば”、背筋群のマッスルコントロールを再考すべし。

 

今年度の九州マッスルマンてっぺんを決める九州選手権が、鹿児島市の川商ホールで開催された。

例年、鹿児島でのマッスルショーは、谷山サザンホールで行われるが、今回は鹿児島与次郎にある大きな会場。

今年の九州選手権出場登録は22名。

意外に少ないが、各県優勝経験者や、九州クラス別の覇者ばかりなので、ラインナップは壮観。

しかし、その中でも、やはりこの一人の選手のシルエットは頭ひとつ抜き出ていた。

それが大分から来た篠田彬(しのだあきら)くんだ。

彼を初めて見たのは昨年の九州選手権。

優勝した長崎の浦岡くんをギリギリまで追い詰めるほど迫力のある筋肉の塊が印象的だった。

その塊が、もっと体積アップしている!

しかも、バランスが良い。

顔よりでかい、三角筋、腕、大胸筋。

骨盤より太い大腿。

上下バランスよく、筋肉の塊が付いている。

しかし、そのバランス良い体に対して、迫力で迫ってくる選手が居た。

それが宮崎の井上くん。

僕は彼がJPC時代から知っているが、とにかく背中が弱かった。

ダブルバイなど、素人に近い寸胴、密度はあるが、伸びない選手だな、と勝手に思った。

それがJBBFに移り、数年前、別人のように広がりと厚みを身につけて宮崎選手権で優勝した。

しかし、それから今ひとつ九州選手権では上位にいけないまま。

その彼が、まるで筋肉でできたプロテクターを纏って舞台に出てきた時、観客はどよめいた。

フロントも、バックも、筋繊維が浮き出る。

もしかしたら、、そんな気持ちにさせてくれる比較審査が始まった。

フロント、真ん中の市木くんも良い感じ。

篠田くん、遠慮がちに取っている、多分性格だろう。

両脚の隙間に注意すべき。ここでは三者互角。

バック。右端の井上くんの各背筋の密度迫力、惚れ惚れする。

篠田くん、一個一個の背筋のセパレーションが綺麗。

欲を言えば、中背部にもっと厚みがあると良い。

臀部からハム、ここで二人に差がつき始める。

サイド、三者三様だが、篠田くんのしっかりしたポージングに比べ、二人には何か安定感がない、クセがありすぎる。

ここでもっと差がつき始める。

アブアンドサイ。

力みのないブレもないポージング、ここで決まった。

もちろん、他の二人も凄い!のだが、脚も腹部も、そして見せた時のホールドの仕方、篠田くんの完勝である。

ギラギラした印象もない、淡々とポーズを決める。

これも彼の個性だろう。

来年の西日本選手権、そして日本クラス別、駆け上がって欲しい。

篠田くんのインタビュー記事はまた後日。

お楽しみに。

しかし、今回、もっとも印象的だったのは井上くん。

最初に会った時はまだ20代だったが、その彼も41歳。

元々独特の華のある選手だ。

課題は、脚。もっと深みを出して、惚れ惚れする上半身により磨きをかけて頂点目指して欲しい。

職場からの帰り道、ふと寄りたくなり肥薩線大隈横川駅を訪れました。

今月初めの集中豪雨で壊滅的な被害を受けた肥薩線、年単位での復旧は難しそうですが、果たして、、。。

鹿児島県で残る最も古い駅舎とのこと、1903年にできたと書いてあります。

鉄がなかった時代、石やそれを砕いて作ったコンクリートでローマ帝国は道を作ってきました。

鉄のおかげで鉄道ができ、多くのモノや人が運べるようになり、いろいろな”中継地”として駅ができて、この街もその頃栄えた跡がたくさんあります。

しかし、鉄とコンクリートを組み合わせることで、もっと違う道が、もっと自由に作られるようになり、もっともっと早く人やモノが動けるようになってきて、そのスピードについていけない場所も出来ました。

 

 

わずか100年の間で、人の求めるものも変わっていきます。

さて、そんな横川駅、ノスタルジックな駅舎に、古いアップライトピアノが置いてあります。

このピアノ、わざと地面からブロックで離して設置されています。

浸水対策でしょうか?

いつの時代から88鍵になったのかよく知りませんが、この決められた鍵盤数ですが、ピアノはその鍵盤を一つ、そして二つ、いや指の数や、速さの組み合わせで、無数の音色を作り出すことができます。

大切なことは、その波長が合うか、合わない波長は、乱れ、不安を脳に感じさせます。

組み合わせと速さでどう心地よい音色を創りさせるのか、作曲家はすごいと思います。

九月5日はちょうど、このLove of my lifeを作ったフレディマーキュリーの誕生日でした。

彼に捧げるわけではないですが、最後まで弾けるようになった記念に弾いてみました。

古い木造の駅舎と、古いピアノのハーモニーがいい感じで調和して、僕の辿々しい演奏のミスを帳消しにしてくれているような気分でした。

こんな素敵な曲を作ってくれたフレディにお礼を言いたいと思います。

 

 

現在発売中の月刊ボデイビルディング、僕の連載はお休みです。

大会シーズン真っ盛り、選手や大会結果など載せるものが満載、僕の書く原稿などは、雑誌には不要です。

再来月くらいから再開予定、とのことです。

さて、”その代わり”でもないですが、いろんなトレーニーや読者の方々と話していて聞かれたことのある話題について、リアルスタイル社のビーレジェンド公式ブログに書かせてもらいました。

題名は、繰り返しの美学。

 

 

ピアノの練習もそうですが、聴いた曲、書かれている曲、なぜ、すぐに弾けないのか?

(ちなみに、僕は譜面が読めないので聴くだけですが、、)

ひたすらベントロー、チンングを”繰り返す”のはなぜ?

進化、解剖生理学、それをヒゲ爺の視点から噛み砕いて簡単に”呟いて”みました。

過去の記事も簡単に読むことができます、のぞいてみてください。

僕たち外科医の仕事も、数をこなさなければ”上手く”なりません。

そして、数をこなして”いき続け”なければ、うまく”いきません”。

いくつかの手術がうまく行った、なんて、それは”ビギナーズラック”なのです。

僕も確実に、この数をこなせなくなる日が近づいているのを感じます。

いつ、手術室に入るのを、おしまい、にすべきなのか、まだわかりません。

でも、衰えた、と感じたら、思い切って辞めないと。

それだけは、大切にしないといけないと思います。