ゴリアテ一家の麻薬取引をぶっ潰した一党。だが、ゴリアテ一家を壊滅させたわけではない。そこまでの力は未だ持ち得ず。


 一党はユアンティに旗を渡しに行くこととした。以前手に入れておいた旗である。これを渡せばヒスイをくれるということであった。そして、ヒスイは鍛冶屋に渡せばマジックアイテムに変わる。
 邪悪な連中と取引なんかしていいのかしら? という疑問に対しては、
「呪術王となるためには、清濁併せのむ器量が必要だ」
 というウルヴェントの強い意志が示された。じゃあしょうがないな。
 ユアンティは地上への侵略を図っているが、地上にはクソ法務神官のテホイジァンがいるのである。
「ユアンティとテホイジァンを争わせれば共に弱体化するであろう。そうした後、吾が新たな呪術王として立つ。これぞ三権分立の計」
 あらゆる民主主義国家が陥っているという恐るべき策略、三権分立の計が今炸裂する。
 一党は地下へと潜り、ユアンティと接触を試みる。
「旗を渡してやろう。でもヒスイ2つ寄こせ」
 要約するとこのような交渉であった。
「ヒスイは1つの約束だったと思うけど?」
「この旗を渡さないとどうなるんだ?」
「まあ、僕の立場は悪くなるかな。大事な戦旗の在り処を人間に漏らして回収されてしまったのだから」
「そうか。なら2つ寄こせ」
「そういうわけにはいかないなあ。だったら死を選ぶよ」
「旗は渡さないけど命を粗末にしてはいけないな」
 死ねと言っておいて命を大事にしろよ、という。
 ウルヴェントが仏のような顔をして、
「私は蛇人間と人間の橋渡しとなりたいのだ。具体的に言うと、統べる」
 その志にユアンティ、大いに心動かされたのか、
「じゃあ、ヒスイ2つ渡す代わりにもう1つお願いを聞いてくれるかな?」
 と前向きな姿勢を見せるではないか。何が、じゃあ、なのかよくわからないが、
「実はこの地下で近いうちに奴隷取引が行われるらしいんだ。君達は奴隷取引なんて許せないだろう? 奴隷に反対だよね? 人は皆自由でないといけないっていう善のパーティーだもんね?」
「ああ、奴隷は大嫌いだ」
「奴隷制度に反対じゃなくて、奴隷という存在自体が嫌い」
「奴隷は解放されなくてはならない。皆殺しだ」
 なんかちょっと違った感じの正義の一党になってしまったが話を進める。
「そういうことなら、その奴隷取引を潰してもらえないかな? 実を言うと、この奴隷取引はユアンティの中でも僕の仲間達とは敵対してる連中が主導してやってることなんで、うまくいっちゃうと困るんだ」
「お前らの仲間ってユアンティの中で何人くらいいるの?」
 サイコロ振って、
「200人中180人くらいかなあ」
「じゃあもうお前らが主流派じゃん! 全然問題ねーだろ!」
 もう一回サイコロ振って、
「うそ。200人中20人くらい」
 ここら辺からマスタリングが適当になっていた。
 ウルヴェントが何だかめんどくさいことを言い始める。
「じゃあ、敵対してる連中の中にお前入っていけ。そして、中から切り崩して仲間増やせ」
「無茶言わないでくれ」
「いいから」
 めんどくせえ。
「そんなことしたって強くなるわけじゃないし」
「強くなればいいじゃん」
「そっかー」
 納得した。
「とにかく、地上の人間を騙して奴隷として売り飛ばそうとしている奴隷商人がいるはずなんだ。そいつらとの取引をご破算にしてくれたらヒスイを渡すよ」
「そいつらどこで取引すんの?」
「それも含めて調べてくれないかな?」
 それを聞いてワンコ、烈火の如く怒り、
「ちゃんと調べてから教えてくれよ!」
「なんで怒られてんの?」
 ユアンティには難しいことだったようだ。
「で、話は戻るが、旗が手に入らないとお前は困ったことになる。そうだな?」
「ユアンティの中で居場所がなくなるだろうね」
「なら、ヒスイ2つで旗は渡す。さっきの奴隷取引の話はヒスイ1つでいいよ。仲良いから」
 とても仲が良いとは思えない交渉術。
「わかった。じゃあ、この話は全部なかったことに。僕は田舎に帰ってトマト農家を継ぐよ」
 ユアンティは引退することを決心したようだった。そんなユアンティに慈悲の手を差し伸べるのがウルヴェントという男である。
「だったら、我が王国へ入れ」
「入ると何かあるの?」
「まず、税金が払える。タダで働ける。そして、建国に参加できる」
 つまり、まだ王国はできてないようだ。
 建国王ウルヴェント曰く、
「ウソもつき通せば真実となる」
「さも当たり前に言ってるけど、それ別にことわざや格言じゃないよね? 良いこと言ってるわけじゃないよね?」
 ワンコが指摘した。
「ともかく、このユアンティは手下になったということで。それでいいか?」
「もちろん!」
 ユアンティは蛇特有の満面の笑みで答えたのだが、
「その言い方がやっすいもん、信用できねー」
 何でか信用されないので不憫だ。


 で、一党は地上に戻ったのだが、そこでちょっとしたトラブルが待っていた。
 世界平和研究所の元神官である。この元神官、どうも異形の力を使って呪術王になろうと企んでいたらしい。そこで一党はこの者を知り合いの商家ホルミーク家に預けて軟禁しておいたのだが、そこから抜け出して地下迷宮へ潜ってしまったのだ。それにつき従う冒険者達もいるという。地下迷宮に隠された異形の力を手に入れんとしての行動か。
 一党は元神官達を追うことにする。異形の力などをこの世に解放してはならない。
 というわけで一党は彼らに追いつき、異形を利用するなどやめたまえ! と説得。元神官につき従っていたエラドリンとエルフとドラゴンボーンとヒューマンの冒険者達(「おれら善のパーティだし?」が口癖)が思いのほか話のわかる連中で、さっさと別次元に帰ってしまったので、1人になった元神官を簀巻きにすることに成功したのだった。
 ただ、この異形の力を守っていた石像がリドルを投げかけてきたのでなし崩しに受けた記憶もあるのだが、そのリドルが、
「法務神官のテホイジァンに呼び出された。あなたはそのテホイジァンのズラがずれているのに気付く。このままでは命がない。手元にあるレンガを使ってこの危機を回避せよ」
「あなたは墓場にいる。墓場にはゴーストがうろついており、見つかれば取り憑かれて死に至るだろう。手元にあるナイフを使ってこの危機を回避せよ」
「あなたはガチムチの花園団に捕まってしまった。このままでは色々な意味で食われてしまう。手元にある簿記3級免状を使ってこの危機を回避せよ」
「砂漠に放り出された。アンドロイドすし職人使って何とかしろ」
 といったなんかどうしようもないものだったので、もう無かったことにしてほしい。
 ちなみに、ナイフで自分を刺して死ねばゴーストに取り憑かれずに済む、てゆーかむしろこっちが取り憑く、という模範回答が得られた。


 えーと、なんだっけ?
 あと、奴隷商人の話があった。
 奴隷商人達がティールの街の貧民街であぶれ者達を騙して地下へ連れ去っているらしいことを突き止めた一党。自らも奴隷商人達に捕まり、地下の取引場所へと連れて行ってもらうという作戦を思いついた。そこで取引をぶち壊しにするという寸法である。
 作戦は見事に当たり、一党は他の奴隷達と一緒に拘束され地下へと連れて行かれる。
 で、どういうわけか奴隷として捕まったのに武装解除されていないわ、拘束具が革紐のみでマイナーアクション1回使えば外せちゃうわ、という適当な奴隷商人達であった。もうマスタリングの適当さが極まった感。
 他の奴隷達30人ばかりが移動困難地形扱いされ、瘴気のたまった穴がボコボコあいている地下空洞にて戦闘開始。
 奴隷商人達はゴリアテ一家の手の者で、取引相手はユアンティに与した人間達。
 一党は最初、奴隷商人達を順当に挟撃して打撃を与え、楽勝かと思われた。が、奴隷達を掻きわけて、ユアンティに与した者達が奴隷商人達の加勢に駆けつけると一転して苦戦。特に、ワンコが毒のSTに成功できず毒ダメージで倒れて死にかける。ウルヴェントがとっておきの1日毎パワーを駆使したり、敵を逆に瘴気の穴に叩き落として毒ダメージ与えたりで何とか勝利。そうして、
「どうもありがとうございました」
 奴隷達から礼を言われた日には、
「てめえ、なに安心してんだ?」
「奴隷からありがとうとか言われちゃったんだけど」
「はねる?」
 一党は奴隷が大嫌いだからね。
「奴隷はとりあえず税金払え。話はそれからだ」
 建国王ウルヴェントは峻厳なる意思を示したという。


「あれ? よく考えたらワンコの着てるアーマーって毒に対する抵抗5あるんだけど……ST失敗し続けてもダメージ食らわないで済むんだけど……」
 そんなもの着てるのすっかり忘れてたのであった。
「死ななくて済んだんだけど……ていうか、もっと楽に勝ててたはずなんだけど……」
 実に適当なマスタリングで、猛省を期待したいところですね。