ティールの街に戻った一党。
 このまま赤い粉の入った像を持って、法務神官テホイジァンと会うのは危険と考えた。
 有無を言わさず取り上げられるのではないか。こちらがレベル12クリーチャー相手に命懸けで手に入れたブツを、はいご苦労様、と権力を笠に着て横取りされる。それはどうにも面白くない。
 少なくとももっと良い報酬(鉄製武器使用の一時的許可などという、自分の懐は痛まないくせに恩着せがましい報酬などではなく)と交換でなければ渡せない。対価を与えられなければ誰が冒険なんかするか、というところである。
 そう考えた一党は、赤い粉の像を知り合いに預けることとした。
 中堅商館ホルミーク家に雇われているナラの所へ向かう。
「なんか命狙われるかもしれないけど預かってて」
 こんなにフレンドリーに頼んだというのに、ナラは渋い顔をする。
「そんなもの預かったら、主人に迷惑がかかる」
「お前の根本的な主人は俺だ」
 ウルヴェントの一言で万事解決。一党はナラに赤い粉の像を押しつけることに成功した。


 さて、後顧の憂いも無くしたところでテホイジァンに報告である。
 テホイジァン様に報告できるなんて幸福だなー、などと自らの幸福さをアピールすること1時間、ようやくテホイジァンに会うことができた。
 一党の話を聞き、テホイジァンは何か察するところがあったらしい。特に、赤い粉末の下りに関しては、
「それはデファイリングマジックによって作られた触媒物質かもしれぬ」
 といったことを漏らす。が、それ以上一党に話すつもりはないようで、一党はさっさと神殿から追い出された。もちろん、報酬として鉄製武器使用の一時的許可をもらった。一時的ということはいつでも取り消せるということで、本当に幸せだなあ。


 翌朝のこと。
 一党が逗留している黄金のイニックス亭三号店の扉を乱暴に叩く者がいる。
 衛兵隊長のマヌーフであった。一党への伝言と、あと衛兵隊長としての頼みがあるという。
 伝言とはザーマス師匠からの言伝である。もう出てこれないがよろしく頼む、とのこと。神殿内でザーマス師匠の身に今何が起こっているのか。想像するだけで幸福だなぁ。きっと、今頃幸せに暮らしているに違いないので、一党には何の不満もなくティールの街の威光はいや増すのであった。
 そして、頼みというのが捜査への協力である。
 近々、街でハシシの取引があるのだという。
 衛兵達がウリクの街から取引に来ていた麻薬商人を捕えて得た情報だ。その麻薬商人達の取引相手というのがゴリアテ一家なる連中。近頃、ティールの街で新興のならず者集団としてのさばっている連中と聞く。
「そいつらが実際に麻薬の取引をするところを押さえたい。こちらが商人の振りをして麻薬を渡して金を受け取れば動かぬ証拠となる。だが、こっちはゴリアテ一家に顔が割れている。そこでお前さん達に協力して欲しいんだ。ゴリアテ一家壊滅のため潜入捜査をして欲しい」
 衛兵隊長マヌーフの話はそのようなものであった。報酬として1人25gp、幹部逮捕でボーナスが出るという話だ。ちなみにゴリアテ一家の構成員は100名くらい。幹部は10人くらいという話も聞いた。
 一党はウリクの商人の振りをして彼等と接触し、ハシシを渡して金を受け取ることにした。取引を成立させ、そこを衛兵隊が逮捕するという算段だ。
 一党はそれぞれ、閃光のラクダモヒー、深海のシシカバブーといったウリク風の偽名を用いてゴリアテ一家との接触を図る。
 そうして、ピラミッドの麓にいる片目の浮浪者サダームなる人物と接触。取引のことをにおわすと、夜にピラミッドの南にある泥棒市場に来い、という答えを得た。
 で、早速夜に行ってみたのだが、どういうわけか一党の言動が怪しまれる。いつも通り交渉ロールが失敗しただけなのにひどい話である。しかも、向こうが手下どもで一党を囲むので、仕方なく血みどろの解決を選ばざるを得なかった。悲しいことだ。出会いさえ違っていれば友人になれたかもしれないのに。
 本当はもっと色々あったような気もするけど、もう忘れた。ナラの兄貴の天下一兄貴が乱入してきたような気がするが、戦闘中空気だったのでよく覚えていない。なんで出てきたんだっけ? とにかく、ゴリアテ一家の幹部1人(あと配下のチンピラ多数)をぬっ殺してめでたしめでたしでした。