吾は武と名誉を重んじるドラゴンボーンの戦士、へカチン。
 高貴にして神秘なるエラドリンのレンジャーと神の御業を顕す敬虔なるエルフの僧侶グエドベ、怜悧なるヒューマンのウィザードであるペンテル、更に新たに加わりし神の護り手ヒューマンの聖騎士スプマンテらと共に旅をしている。
 そんな前置きを言っている場合ではなく、いきなり戦闘である。


 さて、枯枝城の地下にて死者どもを統べるスカルロードと相対した吾等。
 吾等は知略を尽くしてスカルロード達を不意打ちするも、その反撃は手痛い。血で血を洗う争いが始まった。
 敬虔なるグエドベは穿き古した靴下味のポーションによって危ういところを取りとめたが、それで脅威が取り除かれたわけではない。四本腕のスケルトン、スケルタル・トゥーム・ガーディアンはいまだ健在である。ぶんぶん、腕を振りまわしている最中だ。
「ところで、前回の冒険の分の経験値があるはずだ。まずレベルアップしてから戦いを再開しようではないか」
 高貴なるエラドリンからそのような金言を賜ったスカルロード。快く応諾す。
「レベルアップしている間に5回フリーアタックしても良いなら認める」
 吾等は悪と取引などせぬ。断固拒否した。
「では、死ぬがよい」
 スカルロードの命令一下、棘腕のスケルトン達が吾等へと迫る。だが、それは神の護り手スプマンテの分厚い鎧に阻まれた。
「AC33あるもんねー」
 さらっと嘘を言うスプマンテ。だが、見よ。スケルトン達のおぞましき手は神の護り手に傷一つつけられぬ。その言葉によって邪悪の輩を畏怖せしめ、その意思を砕いたからであろう。
 一方、そんなに硬くない吾はザクザクであった。死ぬる。早速、敬虔なるグエドベがその治癒の力で吾を癒す。
「さあ、この3日前の寝ゲロの味のするポーションを飲むのだ」
 吾はそのポーションで勇気百倍。なにしろ、怪我をしたらそれを飲まされてしまうのだ。吾は督戦隊から背中に銃口を向けられている兵士のように、勇敢に戦った。あんまり勇敢に戦ったため、四本腕のスケルトンにバランバランに切り刻まれて倒れてしまったくらいだ。
「変なところで死にやがって! 死ぬところ考えろ!」
 倒れた吾を踏まぬように戦うのは難しい。ゆえに踏みつけながら、敵と切り結ぶ仲間達のなんと清々しきことよ。生きることに貪欲である。
 その甲斐あってか、四本腕のスケルトンをようやく打ち倒した。しかし、そこへ至るまでに敬虔なるグエドベもまた倒れてしまっていた。敵は未だ多数。しかも、敵の首魁スカルロードは無傷である。
「スカルロードって雑魚モンスターだっけ?」
「確かヒットポイント1~3くらいじゃね?」
「多分3」
「高めに見積もったね~」
「何と言ってもボスだから!」
 などと吾等に都合のよい展開を考えるも状況は無情である。このまま戦い続けても、吾やグエドベを回復したところですぐさま削られて倒れるであろう。手番的にそうなのだ。じり貧である。
「よし、わかった。お前の部下になってやってもいい」
 高貴なるエラドリンの上から目線が炸裂した。スカルロードにそう呼びかけるではないか。高貴なるエラドリンは剣を収めようとする。吾等は善なる一党であるから、悪と取引などせぬ。取引などせぬが、スカルロードはそんなに悪じゃないかもしれない。話してみたら、意外と気のいいおっさんである可能性もある。
「降伏するというのか? ふむ。受け入れてやっても良いぞ」
 ほれ見ろ。意外と話せる奴ではないか。
「今倒れたお前達の仲間2人を素材として提供するなら降伏を受け入れよう」
 とんでもないアカの手先のおフェラ豚である。断固拒否する。悪と取引などしてはならぬ。
「よしわかった」
 高貴なるエラドリンは容易く即答するのだった。
 その言葉に従い、ポンコツスケルトン達が倒れた吾とグエドベを並べて引きずりにかかる。大釜に投げ込んで吾等をアンデッドにするつもりらしい。
 と、神の護り手スプマンテの手番である。その手首が急に輝き始めるではないか。そして、すっとこすっとこ吾等の隣まで移動すると、
「レイオンハンズ! &ポーション飲ませ!」
 吾等は回復する。
「裏切ったなぁあー!?」
 高貴なるエラドリンは激怒した。スカルロードに向かって。
「え? え? なにが?」
 急に怒られて、スカルロード呆然。
「ご、ごめん……」
 謝っちゃった。
「いや、先に言った方が勝ちかなって」
 高貴なるエラドリンは悪びれぬ。冷静に先程の自らの行いを説明してみせた。
「レイオンハンズで手が滑ったんです」
 神の護り手スプマンテも悪びれぬ。
「こちらの意思と無関係に手が滑ったんだからしょうがないじゃないですか」
 善なる神アヴァンドラの信徒はみんなこうである。
 我を取り戻したスカルロードは激昂した。
「なんでこっちが悪いみたいになっとるのか。これだからエラドリンの言うことは信用できぬ!」
「悪に妥協してはいけない」
 高貴なるエラドリンがとても教訓めいたことを告げた。
「もう! そういうことするなら……」
 と、スカルロードはとっておきの秘術を使い始める。大釜に何か念じ始めるや、そこからざばりと新たな死者が立ち上がり始めるではないか。敵はいよいよその数を増す。
 レイオンハンズとヒーリングポーションで回復した吾とグエドベも、更に自らポーションを飲むなどして戦列に復帰。
「でも、みんな持ってるのはまずいヒーリングポーションばっかり」
「酸化しちゃってるから」
「好きな人にはこれがいいんだ」
 戦いは続く。一進一退である。
 と、炎に包まれたスケルトンが火炎の弾を投げつけてきた。それは後方で魔法砲台をしていた怜悧なるウィザード、ペンテルを襲う。ごう、と燃え盛るペンテル。
「流石火計好き」
「自ら燃えるとは」
「反撃だ! マジックミサイル!」
 ペンテルの反撃は当たらない。そして、セービングスローも振るわない。ずーっと燃えている。
「何でそんなに燃えるの好きなの?」
 敬虔なるグエドベが聖なる炎で一時的HPをペンテルに授けながら問う。その一時的HPを継続ダメージ(燃えてるから)で右から左に失いつつ、
「今度こそ反撃!」
 当たらぬ。
「でも今悪い目出したから、もう大丈夫!」
 セービングスロー。燃える。何度やっても燃え続けるペンテル。
「あー、もーこりゃ駄目だ。死ぬ前にアシッドアロー!」
 これまで一度も成功したことがないアシッドアロー。
「ぎゃああ」
 酸の継続ダメージで溶け死ぬフレイムスカル。なんと初めて成功した。しかも、ようやく炎も消える。何か死亡フラグのようである。
 これで調子を取り戻したペンテルであったが、状況は芳しくない。というのも、また吾が死んでいたからだ。
 高貴なるエラドリンが棘骨のスケルトンを両刀で仕留めた。と、崩れ落ちた棘骨スケルトン、周囲に棘骨を撒き散らして四散するではないか。吾はその爆発に巻き込まれたのである。まさかあんなにダメージが来るとは……。
 このままでは再びスカルロードによって大釜から新たなアンデッドを召喚されかねない。
「もういいや! 接敵しても、次で誰かが何とかしてくれる!」
 そこでなんと、怜悧なるペンテルがスカルロードの隣まで全力で駆け寄るではないか。遠距離からの魔法が主たる攻撃である彼が思い切った。そして、炎の魔法の態勢。
「今の今まで燃え続けていたのはこのバーンハンズのため! 体内に炎エネルギーを取りこむ必要があったからだ!」
 炎チャージされた今、怜悧なるペンテルは裂帛の気合を込めて業火を噴き出したのである。
「ば、ばかな!?」
 クリティカル。一撃であった。スカルロードは炎に包まれ、一瞬にして影となり消え失せる。
「ぎゃあああ」
 こうしてスカルロードは滅びた。他のアンデッド共もそうなれば容易い。敵は駆逐され、ようやく戦いは終わった。


スカルロード(経験値500)×1=500。
スケルタルトゥームガーディアン(経験値500)×1=500。
フレイムスカル(経験値350)×2=700。
ブレイジングスケルトン(経験値200)×2=400。
ボーンシャードスケルトン(経験値200)×3=600。
スケルトン(経験値150)×6=900。
ぽんこつスケルトン(経験値25)×12=300。


1人当たりの経験値は780。


 大変な戦いであった。きっと、それに見合うお宝も得られるであろう。
 そう思った吾等はこの地下室を探らんとす。が、
「おい、様子がおかしいぞ!」
「地下だ! 地下へ急げ!」
 どやどやと賑やかであることだなあ。
 ばたん、と地下室の扉が開かれ、ホブゴブリン達が雪崩れ込んでくるではないか。
「お前ら! 何だこれは!?」
「たばかったな!?」
 地下室の惨状を見て、ホブゴブリン達は口々に喚く。武器を身構え、にじり寄る。
 吾等は小休憩を取る間もなく、ホブゴブリン達に踏み込まれてしまった。
 以下次回。