浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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いや、ずいぶんとここも
サボっていることは
自分でもわかっていたのですが

一応5月6月7月8月と
次の次の本、さらにその次の本の
準備に邁進しておりましたので、

どうぞご容赦いただけますよう。

ですからまあ、おかげさまで
あと三冊は、時期こそまだここで
御案内まではできないのですけれど、

どうやら基本
無事発売できる方向でおります。

全部訳書です。

うち一冊は、こちらになります。


『安アパートのディスコクイーン』の方を
楽しんで読んで戴けた

トレイシー・ソーンのファンの皆様には、
たぶん朗報だと思います。

一章のあのギターを買う以前の
本当の普通の少女時代が
掘り下げられていくような構成です。

もっとも、それだけでは
全然済まないところが
この方のこの方たる由縁とでも
いうのがいいのか、

世代論、都市論、そして彼女自身が
否応なく経験した両親の死などにも
触れられてくる形となっております。


そういう訳でここに手をつけるなら、
IDLEWILDからまた順番に
EBTGを扱うつもりでいたのですが、

さすがに今回だけは
反応しない訳にもいかなくて。

The CarsThe Cars
1,200円
Amazon


すでに皆様御承知かと思いますが、
去る十五日、

カーズのリック・オケイセックが
亡くなってしまいました。

いや、もうそんなことが起きても
おかしくないだけの時間が

とっくに経っていることも
自分でも十分に
わかってはいるつもりだったのですが。


あの頃どれほど、彼らの曲と映像に
夢中になっていたことか。

栄えある第一回MTVアワードを受賞した
あの奇天烈なYou Might Thinkのビデオに

80年代が産んだ
バラードの最高傑作と言っても
決して言い過ぎではないはずだと

僕としては心底そう思っている。
名曲Drive。

これが一緒に入っている
HEARTBEAT CITYなど
今までどれほど聴いてきたことか。


僕自身がカーズの音に触れたのは
このHEARTBEAT CITYが
最初だった訳ですが、

今となってみれば、
やはり知るのが遅過ぎたようです。

後追いで聴く形となった
78年のTHE CARSから
81年のSHAKE IT UPに至るまでの計四枚、

毎年のようにリリースされていた
これらの作品群は、
収録のどの曲もアイディアに満ち、

かつスタイルはすでに確立され、
ぶれることを知らなかった。

全米ではすべて大ヒットだった模様です。

ですから、その集大成たる
HEARTBEAT CITYが
すごくない訳がなかったのだなと
それはつくづくそう思います。

このカーズの音は確かに、
ほかのどのバンドとも
まったく似ていなかった。

ロックと呼ぶには洗練され過ぎ、
ポップと呼ぶにはやや野暮ったい。

ヴォーカルは二人とも
クセがあるというか
アクの強い歌い方しかしないのに

コーラスワークは
イーグルスとかCSN&Yにも通じそうな
美しいハーモニーを外さない。

きっちりギターロックのはずなのに、
大胆なシンセの高音が
全体を全然別の響きに変えてしまう。

しかも、思い出したかのように
変則的なリズムを
導入してきたりもするけれど

それも気づけば
きっちりと違和感を消し、
むしろダンサブルな
トラックに仕上がっている。


おそらくはだから、ブロンディや
トーキング・ヘッズと一緒になって

まあ、もしそういう言葉が
あるのならばの話にはなるのだけれど

いわばアメリカン・ニューウェーヴに
道をつけていったのが、
このバンドだったのだなと、

改めてそんなことを
つくづく思うようになっていた矢先でした。


慎んで御冥福をお祈りいたします。


今回記事タイに選んだ
Just What I Neededは
本編で扱ったDriveと同様(→こちら

すでに00年に世を去ってしまっている
ベンジャミン・オールの方が
ヴォーカルを取っている作品なのですが

曲はリックによるものです。

ていうか、カーズの曲は基本全部そう。

カッコ良く聴こえた方が
良さそうだなと思うものを
ベンジャミンに振っていたのだとか。

同曲はデモテープの段階のものを
ボストンのラジオ局が
気に入って強力にプッシュし

ひいてはこのカーズに
メジャーレーベルとの契約を
もたらしてくれる
結果にまでなったという

この尖鋭バンドには実に見事に相応しい
伝説を付与してくれている一曲だという
まあそんな理由でのチョイス。

当時は「燃える欲望」なんて
邦題もついていたようですが。



カーズのこの不思議なアプローチは
ベスト盤での発表となった
Tonight She Comesと

ラストアルバムとなった
DOOR TO DOOR収録の
You Are the Girlで完成します。

バンドとしてもうやれることが
なくなったというのが、

活動休止というか解散だったか
その理由だったという内容の
リック自身の発言を
どこかで読んだ気もするのですが、

ソースは思い出せませんでした。

美しいのにどこか
素っ頓狂な感じがしないでもない。

そんなサウンドに、もしご興味を
お持ちいただけたりすれば
とても嬉しく思います。