冬季イブネ台地 大はずれ | 強化人間331のブログ

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サイボーグである強化人間331の、つれづれ山行記録。
さしておもしろくもないのは、ご愛嬌。

鈴鹿北部脱却!

が目標であります(鈴鹿山脈自体からは当分脱出できそうにありません)。近いのをいいことにずっと北部ばかりで、目新しい山行をまったくやってなかった。まあおかげさまであまり親しみのなかった北部をかなり開拓できはしましたが。

1/21日曜日、天気予報はまたも晴れ。とくれば快晴の冬季イブネ台地なんて最高ではあるまいか? よっしゃ決まりや! 11月にいったきり、実に2か月ほどお留守にしてました。南部はどのような顔を見せてくれるのか。

それはそうと(いいからさっさと始めろや!)ソロカラオケをここ3か月ほど週一で継続しております。当然いやおうなしにレパートリーが増えていきまして、いままで絶対聞かなかったであろう楽曲もどんどんチャレンジしてるわけです。

相川七瀬さんなんてかっこいいですねえ。まったく射程外だったのですが、「夢見る少女じゃいられない」をたまたま聞いてドはまりしました。ああいうのは女性が憧れる女性じゃないですかね。男性からするときつい印象ではありますが、なんにせよかっこいいことに変わりはない。90年代ロックシーンを象徴する1人でありましょう。

管を巻いてると進まないのでとりあえずコースをば。ご覧の通り鈴鹿深部を主軸とした(わたしのなかでの)メジャールートですね。

朝明渓谷駐車場~根の平峠登山口~根の平峠~タケ谷出合~小峠出合~小峠~イブネ北端~クラシ~クラシ北尾根経由~ワサビ峠~お金峠~お金明神~お金出合~大瀞~中峠~朝明渓谷駐車場

①早出は……諦めた

例にってソロカラオケ→創作→マジックデュエルズのコンボが炸裂し、仮眠を取り始めたのが5:00すぎ。こたつにくるまってうとうとしかけたところで端末の目覚ましがジリリと部屋中を席巻し、怒りに任せてホームボタンで黙らせます。やれやれ、寝入りばなになんという不作法なやつだ、これだから機械は信用ならんのだ! (訳者注 時間をセットしたのは当のご本人です)

はい、なんとか8:15には出発できました。長良川の堤防は信号がないのでバンバンかっ飛ばせるはずなのですが、毎度60キロくらいでちんたら走るばか者がいるせいで大名行列のごとく、ばか者を先頭に渋滞ができてますね。

最近煽り運転が罰則化されるだのなんだの聞きますけど、ひとつだけ言わせていただきたい。周りの交通に合わせられない自分勝手な人間に「あなたのせいで後ろが渋滞してますよ」とわからせることと、むちゃくちゃに煽りまくって事故を誘発する犯罪行為を十把一絡げにしてもらっちゃ困る!

のっけからなにか始まってますね。スルーでOKです。そんなわけで現地には9:35着。1時間20分ですか。思ったより遠くなかった。これくらいの距離なら許容範囲です。積雪量の予想がつかなかったので、スノーシュー、アイゼンのフル装備で臨みます。重い。9:45発。

法定速度を守ってなにが悪いという意見はごもっともですけど、そもそも道交法というのは――というか法律のすべては、国民の生活が安全に運営されるべく施行されたもののはずでしょ。ですから型どおりにそれらを遵守すればいいってもんじゃなくて、それはあくまでガイドライン程度のものだと考えるのが妥当なんですよ。でなきゃ刑事訴訟なんて必要ないじゃないですか。これこれの罪を犯した。ほい懲役何年。即決ですよ。

うだうだ裁判やってるのは法律に何通りもの解釈があるからで、それはいろんなファクターによって変動しうる。柔軟に適用できるからこそより住みよい世の中になる。ですからちんたら走るクソ野郎が「法定速度だ、文句あるか」とのたまうのに対して、われわれ圧倒的多数のマジョリティは「文句あるぞ」とやり返す根拠はあるのです。

雪がなくて張り合いがないと思ってたら、影の部分にはちゃんと残ってました。さすがは天下の根の平峠ルート、無数のトレースが刻まれ、立派な道になってますね。要介護状態であります。

そんなに急いでどこいくんだよ、という意見もここらで潰しておきましょう。仮に堤防を時速70キロで走れるところを協調性のない阿呆が50キロで走ってるせいで、これに付き合わされたとしましょうや。1時間あたり20キロの損失ですよ。損失を時間に換算すれば、

70=0(70キロで走っていれば損失はなかったので)
50=8(20/50=0.4, 0.4×20=8)

どうですかみなさん、法定速度遵守野郎どもはわれわれに8分もの損失を出しているのですよ、いいですか8分ですよ8分! ん、8分? 8分か、ふうむ、なるほどね。まあその、なんだ、明日からもうちょっとゆっくり走ってもいいかな……

ほい、10:45、1時間で根の平峠に詰め上げました。思っていたよりずっと雪が少なく、このぶんでは背中に担いだスノーシューの出番はまたもやなさそう。ちょっと調べてみたところ、わたしの使ってるMSR製は2キロもあるそう。性能は申しぶんないんですけどねえ。アメリカ人の体格と体力を前提に作ってあるので、矮小な日本人には文字通り荷が重いわけです。

根の平峠直下。悪くないロケーションです。

ザクザク西へ下って神崎川の流れるタケ谷には11:05ごろ着。相変わらず渡渉困難なのには参りました。この近辺からではどうがんばっても無難に渡れないようです。ままよと強行突破。若干浸水し、のちのち足先が壊死するのではないかと思われるほど冷え切る事態に発展します。

タケ谷周辺は一面積雪してますね。駐車場にけっこう車が停まってたので踏み荒らされてると覚悟してたのですが、わずかにトレースはひとつだけ。みなさんわかりづらい神崎川流域を避け、メインの縦走路か釈迦にいってるようです。

11:15ごろ小峠出合。ここから鋭くV字に窪んだ沢を詰めていきます。ただ雪のおかげで土台ができており、無雪期よりむしろ楽なくらいでした。詰め上げる直前は相当の斜度ですので、こちら周りで下山する場合はアイゼン必携でしょう。わたしは登りだったし、なにより面倒なので巻かないままキックステップで無理やりよじ登りました。

小峠には11:40ごろでした。ここからは尾根をひたすら辿ります。陽のあたりやすい尾根は沢に比べて積雪が少なくて助かります――と思ってたのですが、グズグズに腐ったザラメ雪になっているせいでまあ滑る。一歩歩くごとに二歩後退といったありさまで、ずるずると足をとられ、非常に苦戦しました。

12:50、やっとイブネ北端ですね。それはいいのですが、天気予報では降水確率10%、ピーカンだと聞いていたのにあろうことか、雪が舞ってるじゃないですか。これは気象庁、やってしまいましたなあ。おまけに風も強い。足先は冷え切っており、いよいよなぜこんなことをやってるのか疑問になってまいりました。

手早くカップうどんと菓子パンを流し込んでおりますと、イブネのほうからじいさんがやってきました。互いにどこから登ってきたかを報告し合い、しばらくバリルート談義に花を咲かせます。この時期にイブネ台地にいる人間というのはまともでないことが多く、じいさんも小峠、クラジャンなどの専門用語を常識であるかのように使ってきます。若い娘さんだったら言うことはなかったんですけどねえ。

しょうもない景色パート1。雪の舞う荒涼としたイブネ台地。こんなはずじゃなかったのだが。

パート2。やっぱり曇天だと映えませんなあ。ちなみにじいさんはわたしの通ってきた小峠経由で下山するとのこと。俺が最後になっちまうかもなあと笑っておられましたが、心配せずともどうせドベケツはわたしです。13:20再出発。

 

そうそう最後といえば(うんちくコーナーですよ、みんな逃げて!)、原初生命の発生なんて興味の尽きない話題ですよね。みなさんご存じの通り、地球上の生物は例外なくデオキシリボ核酸(DNA)を上流としたセントラルドグマ(中心教義)で動いております。図示すれば、

 

DNA → RNA → タンパク質

 

という流れ。DNAはP(リン)と糖を骨格とした2本の主柱を、4つの塩基(A, G, C, T)がつなぐことで構造を保ってるのですね。これが有名な二重らせんにねじれながら細胞核のなかにぐるぐる巻きになって収められてまして、呆れ返ることにこいつを伸ばすと2メートルにもなる。肉眼で見えないたったひとつの細胞に2メートルの核酸ですよ、信じられますか?

 

上述の主柱を水素結合でつないでいる塩基、こいつらがデジタル情報を保持してまして、みっつでひとつのアミノ酸をコードしてると(コドン)。アミノ酸はタンパク質の前駆体であり、これらがいくつもペプチド結合してタンパク質になる。で、タンパク質は生体を維持するのに必須の触媒、よく耳にする酵素であります。DNAは身体に必要な物質を合成するための設計図なのですね。

イブネ台地のジミー大西ことクラシ(1,145メートル)にも立ち寄りました。イブネが360度の大展望なのとは対照的に、木々に囲まれた眺望ゼロのカスピーク。彼我の差は歴然です。

 

そこで原初生命の発生問題が出てくる。DNAは20種類のアミノ酸をコードする遺伝暗号の束(=遺伝子)を2万種も保持する超精密なデジタルメモリであり、これほど複雑で高機能なしろものが果たして自然発生したのか? そもそもDNAを構成する塩基を合成するのはタンパク質が触媒する代謝ですので、タンパク質がなければDNAも存在しないはずなのです。

 

どっちが先に生まれたのか。それはどのような過程を経て地球上に誕生したのか。主流はずばり、「RNAワールド仮説」ですね。詳細は省きますが、RNAはDNAのぱったもんみたいなものですので、自身を複製する情報を保持してます。それだけじゃなく、80年代に触媒機能をあわせ持つRNA(=リボザイム)が発見されました。

 

これが決定打となり、いまでは原初生命はRNAだったのだろうということになってます。のちに複製をDNAへ、触媒と代謝をタンパク質へ分担させるよう進化したと。ただいろいろと無理のある部分もあるそうで、そのへんはなおざりにされてあんまり真剣に考えられてなかった。

さてここからはクラシ北尾根と呼ばれるバリルートをえんえんと縦走し、鈴鹿随一の難易度を誇るクラジャン越えが待ちかまえております。ここをクリアするためにわざわざアイゼンまで携行しましたが、雪のついたクラジャン、果たしてどれほどの難所になってるのか。

 

◎GADV仮説 生命起源を問い直す 池原 健二

 

ところどころ無理のあるRNAワールドに異議を唱えた一冊。4つの比較的単純な構造のアミノ酸が生命の発端になったという内容ですね。180ページ程度のコンパクトサイズながら、非常に精緻かつ慎重に理論だって著者の仮説を展開しております。時間を忘れて夢中になって読み進むことうけあい。驚くべき知的興奮が得られるでしょう。

 

版元が版元ですし(京大学術出版会)、内容も生化学や代謝、遺伝子の予備知識のあることは前提になってますけど、わからないところは「そういうもんだ」と思って流しても大丈夫。なんといっても低学歴のわたしが読めたんですから。下手な小説なんかより何十倍もおもしろく、ためになるのは保証します。

 

生命が誕生したのは40億年近くも前ですので、現時点ではRNAなのかGADVタンパク質なのか、はたまたまったくべつのなにかなのかは証明できないようです。ただわたしが圧倒されるのは、どの陣営も精いっぱい生命の神秘を解き明かすべく日夜奮闘してるのだという点。証拠を積み重ねて理論を補強していく尊敬すべき姿勢。

 

最後にひとつ。こうしたすばらしい知的事業が進むかたわら、生命の発生は神がどうたらいう創造論者のみなさん。あんたがたは恥ずかしくないんですか? なんの証拠もなしにばかの一つ覚えみたいに神さまがお創りになったとかほざいて。わからんもんを「神」という名のダストシュートへ即座に放り込む。これはいちばんやったらあかんことだと思います。

 

なぜそうなのだろう。科学者でなくたってそのように問いかけることは誰にだってできるはずだとわたしは信じますし、そうした問題意識がばかげたアミニズムを放逐し、真の科学立国を招来せしめるのではないか。そう願って今回は擱筆したいと思います。

 

っておーい! まだ途中だって!

 

我慢してもう少しだけお付き合いください……。

こんな感じでした。これは心の余裕が出てきたクラジャンのコル付近から見上げて撮影したものですね。「心の余裕」という書きかたから想像できる通り、けっこう難しかった。わたしはひやっとした場所も「ハイキング程度」とか「冷静にいけばどうってことない」とか、とかく割り引いて表現する悪いくせがあります。なぜか。

そりゃもちろん、やたらにビビってたと思われるのがいやなんですよ。ですから「難しい」と書かれてたら、それはもうまちがいなく難所だと思ってもらってかまいません。これだけの急斜面にずるずる滑るザラメ雪。面倒だったのでアイゼンも巻かずに下りましたが、肝を冷やしました。もしチャレンジされるのなら、アイゼン必携です。

対岸からクラジャン全景。こうして見るとよくあんなところをツボ足で下ったものです。実際は見た目ほど難しくはありませんが、高いとこ苦手な人はしんどいかもしれません。

クラジャンをクリアしてしまえば、あとはのんびりと小ピークの続く快適な縦走路。そしてここはワサビ峠ですね。11月にきたときはありがたい手作りの道標があったのですが、またもや撤去されてしまっており、いまやなんの目印もないただのコルと化してます。

これから当ルートを辿るかたはちゃんと予習しないと、ワサビ峠がどこだかわからんかもしれません(ご覧のようになんの変哲もないコルですので)。バリルートだからそもそも道標をあてにすること自体がお門違いだと言われればそれまでだけれども、せっかく善意で設置してくれた道標をなぜ撤去するのか。マニアの考えることはわからん。

なにやらぶれてますが、深部にひっそりとたたずむ超絶ザコピーク、作ノ峰(948メートル)というのもあります。このピークを踏むことができれば、あなたも鈴鹿深部マニアの仲間入り!

縦走路のようす。陽当たりのよい尾根ですので雪もほとんどなく、ペナントは随時巻いてあります。これで二回めですので勝手がわかっており、ずんずん進めました。

15:00ごろ、ようやくお金峠ですね。思ったより楽勝でした。そこからちょっと下ったところに、

このような目立つペナントがあり、わかりづらいですが木にも「オカネ」とありますね。ここから急斜面を5分ほど登ると、

これがうわさのお金明神。どっしりとした岩塊が堂々たる威容を見せつけてます。わたしは無神論者ですので(というか神さまなんかいるはずないので、無神論「者」という言葉自体に異議があるのですが。この表現だとあたかもほかに解釈の余地があるかのように聞こえるじゃないですか)、この石ころにそれほどありがたみは感じませんが。

沢道は両サイドの壁を形成する尾根からどんどん雪が雪崩れてくるため、どうしても積雪が多くなります。お金峠~お金出合のルートはご覧のように一面積雪してますね。冬季鈴鹿深部を歩くおつもりなら、こうした場面に出くわしてもひるむことなくルートファインティングしていけないとつらいかも。

15:30すぎ、お金出合。誰かが入った形跡はゼロですね。雪に苦戦してまでお金明神に詣でる信心深い登山者はいないようです。

ここからが遠かった。16:00、やっと大瀞。雪も深く、道も高巻きだったり何度も渡渉したりと変化に富むせいでわかりづらい。このあたりを自信を持ってクリアするコツは、神崎川の右岸に沿って歩いているのだ、という大前提を意識すること。そうすれば多少道がぶれたりペナントがなくても、沢沿いに歩いていさえすれば不安はないはずです。

最後の気力を振り絞り、16:40に中峠へ詰め上げました。ああしんど。ザックを下ろしてぐったりと座り込みます。ヘッドランプを準備し、スパッツをはずし、16:50、重い腰を上げてスパートをかけます。ちなみになぜスパッツをはずしたのか? 理由はずばり、ものぐさなわたしの性格が如実に表れたのですね。

スパッツは足回りを保護する冬季登山必携アイテムではありますが、登山口周辺の低いあたりはむしろ雪のないことのほうが多い。下山のおり、最後までばか正直にスパッツを巻いてますと、泥だらけになって閉口する破目になりますね。したがって雪で汚れを落とせる上部ではずしてしまえば、事実上一度も洗わずにすむのですよ! なんて冴えてるんでしょ。

さすがはメジャールートだけあって、中峠からの下りはばっちりトレースがついてました。ざくざく下って17:30には登山口、さらに林道を詰めて17:45、駐車場に着いてしまった。9:45発、17:45着ですので8時間ですか。最近9時間越えが多かったのでなにやらもの足りないような……。

②温泉

今回は趣向を変えまして、岐阜県南濃の雄「海津温泉」としました。かなりご無沙汰してましたが、やはりこっちも相当良質の温泉であります。酸化鉄の混じった濁り湯、個人用サウナマットの貸し出し、良心的なお値段など、向かうところ敵なしでありましょう。さっぱり湯あみし、55.2キロを維持。天下一品ラーメンにて暴食し、体重はめでたく戻りましたとさ。

③反省

まったく抜かりのない(=見どころのない)山行でした。惜しむらくは天候! 天気予報より正確な情報がなかった……。このフレーズは北斗の拳からのパクリですね。修羅の国最強の羅将カイオウをケンシロウが倒した際、「惜しむらくは井の中の蛙! (お前は)おのれより強い男と戦ったことがなかった……」と諭したのでした。(なんのこっちゃ)

そういうわけで次回はぜひ、ピーカンのときに再訪したいものです。

おわり