■読み聞かせの大人も号泣注意
荒れ狂う嵐の夜、壊れかけた小さな小屋で、ヤギが雨風を避けていた。そこへガタン！と音を立てて、誰かが入ってくる。でも真っ暗で何も見えない。
〈ハアハアという、いきづかい。なにものだろう？〉
ヤギは、硬いものが床を打つ音を聞いて、ひづめがあると安心する。だけどそれは、足をくじいて棒きれをついたオオカミだった。オオカミのほうも相手が大好物のヤギとは気づかない。暗闇で身を寄せ合い、仲良くなったふたりは、あしたのお昼を一緒に食べようと約束して別れる。真っ暗でお互いの顔もわからないから、こういって。
〈じゃあ、おいらたちのあいことばは、『あらしのよるに』ってことっすね〉
さてどうなる…というところまでが、２０年前に刊行された第１作。続きが気になっても大丈夫。ヤギのメイとオオカミのガブを主人公に刊行されたシリーズ７話を合本にした２０周年記念の完全版だから。ロングセラーを一気に最後まで楽しめる。ラストは読み聞かせてる大人も号泣注意。（講談社・１８５０円＋税）