【美の扉】画家が愛した絵になる風景 「ノルマンディー展 近代風景画のはじまり」 | 毎日のニュース

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 パリを流れるセーヌ川は、やがてフランス北西部のノルマンディー地方を蛇行しながら西へと進み、港湾都市ル・アーヴルから大西洋に注ぎ出る。

 数年前、印象派のふるさとを訪ねてノルマンディーの各地を旅したことがあった。セーヌ河畔(かはん)には美しい水辺の風景が広がり、中世の古都ルーアンの街並みはロマンチック。海沿いにはトルーヴィルやドーヴィルなどの有名リゾート。そしてル・アーヴルは、何と言ってもモネが1873年、印象派の語源となる絵画「印象、日の出」を描いた地だ。「猫の目のように変わる」といわれるこの地方独特の空模様も、光の表情を追い続けた印象派画家らに多くのインスピレーションを与えた。

 しかし、ノルマンディーが「絵になる」と発見したのは印象派が最初ではない。印象派よりも前に、そしてポスト印象派の画家たちもこの地を好んで描いてきたことを、東京・西新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「ノルマンディー展」で確かめることができる。

 19世紀前半、ノルマンディーに魅せられたのは英国の風景画家という。その代表格がウィリアム・ターナー(1775~1851年)。彼は5度ノルマンディーを旅しており、その際描いた素描や水彩画を帰国後に油彩画に仕上げたほか、版画集として出版。叙情的な風景画は人々の憧れをかきたて、ロマン主義を中心とした仏画家たちにもノルマンディーを「ピクチャレスク(絵になる)」と認識させたという。