【食を守る 未知国へ(下)】仙台のコメ農家「農業も楽しいと伝えたい」 | 毎日のニュース

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 被災地に4回目の“実りの秋”がやってきた。仙台市若林区を拠点とする農事組合法人「仙台イーストカントリー」の広大な田んぼでは、重たげに頭(こうべ)を垂れる黄金色の稲穂が一面に広がっている。

 同法人の理事を務める佐々木千賀子さん(61)が、法人の代表理事でもある夫の均(ひとし)さん(61)らと今年最初の稲刈りを行ったのは9月に入ってまもなくのこと。収穫したての稲を精米し、直後にご飯を炊いて家族で食べた。つやつやの米を頬張ると、口の中にぱっと甘みが広がる。農家のうれしい特権だ。

 「でも、こんなおいしいお米を食べるのは1日だけ。舌がぜいたくになっちゃうから」。同法人では今年、計62ヘクタールに作付けしており、これからもち米を含めた9品種が次々と収穫の時期を迎える。

 3年半前、目前に広がっていたのは津波で流された大量のがれき。計72ヘクタールあった同法人の耕作地は3分の2が津波にのみ込まれた。

 それだけではない。農地の規模を拡大し、農作業の効率化を図るため、平成20年に近隣農家と農事組合法人を結成。トラクターなどの農機具も新調したが、ほとんどが津波をかぶり使い物にならなくなった。「もう続けられないかも」。そう思ったこともあった。