産業革命の頃の英ロンドンの貧民街を生き抜く人々の猥雑(わいざつ)なパワーにあふれた音楽劇「三文オペラ」(ベルトルト・ブレヒト作、宮田慶子演出)が新国立劇場(東京都渋谷区)で上演中だ。
色男の大泥棒、メッキース(池内博之)をめぐる女たちの綱引きの中心となるポリー役には米留学帰りのソニン(31)だ。
ソニンは平成24年から1年間、文化庁新進芸術家海外研修制度でニューヨークに留学。演劇関連のトレーニングに通いながら、時々、オーディションを受ける生活は「戦ったな、という印象」だったという。
「組合に入っていないとオーディションが受けられないなど気持ちは高まるのに現実は進まない状況で、私はこんなに格好悪かったと気づいた。でも、落ち込まなかった。落ち込んでいるとおいていかれる」
「三文オペラ」の舞台となる19世紀ロンドンも、生きるために何でもありだったのだろう。乞食(こじき)たちには縄張りがあり、総元締はポリーの父、ピーチャム(山路和弘)。「乞食の友商会」まである。街のヒーローはメッキース。この色男は自分を愛するポリーらをいいように転がし、逃亡の旅に出る。一見、女性たちがメッキースに振り回される展開だが、実は逆。女たちはしたたかに状況を切り抜けていく。
「男性より女性の方が生きるために変わっていける。それを象徴しているのがポリー。その成長と切り替わりをテンポの良い芝居で見せられたら」。28日まで。(電)03・5352・9999。(津川綾子)