新聞部で活動する女子高生の恵美子(市川由衣)は、部室で先輩の洋(池松壮亮)から不意にキスを迫られる。「ただ女性の体に興味があっただけ。相手は誰でもよかった」とクールに言い放つ洋だが、恵美子にすれば、これまでの生き方を百八十度変えてしまうほどの大事件。早くに父親を亡くした結果、母親に厳しく育てられ、親の愛など感じたことがなかった恵美子は、求められるままに洋と体を重ねるうちにだんだんと愛への関心を高め、自分が一人の女であることを強烈に意識していく。
原作は作家、中沢けいの文壇デビュー作「海を感じる時」(昭和53年)。発表当時、現役女子高校生が手掛けた「スキャンダラスな作品」と話題を呼んだ。
若手実力派の池松と、新境地を模索して初ヌードを披露した市川の静謐(せいひつ)ながらも激しい濡れ場に、まず目を見張るだろう。2人の本気度は、市川が池松の熱演に敬意を表し、「前張り先生」と呼んだことからもうかがえよう。作品からは30年前と今の若者たちの性意識の温度差も見て取れ、興味深い。13日から全国順次公開。1時間58分。(天)
★★★★(★5傑作 ★4見応え十分 ★3楽しめる ★2惜しい ★1がっかり ☆は半分)