東日本大震災から11日で3年半。震災の被害と教訓を子供たちに伝えていくため、多くの絵本が出版されている。そんな絵本の一つ『ハナミズキのみち』(金の星社)には、住民を守ろうとして犠牲になった若者の願いが込められている。(戸谷真美)
美しい街、家族や友人との思い出、海岸で眺めた夕日。明るい色で描かれていたページが突然暗くなり、「あのとき」がやってくる。地面が揺れ、巨大な黒い渦が街をのみ込む。しかし、その後には空から降りてきた花が、新しい道を彩ってゆく-。
「津波の被害を繰り返してはいけない。それは息子の思いであり、この街のみんなの思いでもあるんです」。『ハナミズキのみち』の作者で、岩手県陸前高田市の観光協会に勤める浅沼ミキ子さん(51)は、震災で長男の健(たける)さん=当時(25)=を亡くした。あの日、市の臨時職員で消防団員でもあった健さんは、勤めていた海沿いの施設に来ていた高校生らを避難所だった市民会館に運んだ。だが、津波はその市民会館をも押し流した。「どんなに無念だったか。息子の悔しさを思って、最初はそんな思いをただ書き殴ったんです」
短い文章を残したいと考えるうち、「子や孫の代にまた(津波が)起きるかもしれない。子供たちに伝えよう」と、絵本を作ることを思いつく。その頃、夢うつつで健さんに袖を引かれたという。「ひと目で避難路とわかるように、ハナミズキの木を植えてほし い。おかん、頼むよ」
ハナミズキの花言葉が「私の思いを受けてください」だということは、後から知った。