「日本の軍歌」辻田真佐憲さん 最も成功した政治的エンタメ | 毎日のニュース

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 黒塗りの街宣車が大音量で流す怖い音楽というイメージがすっかり定着した軍歌。だがかつては国民の身近な娯楽であり、もうかる商業コンテンツでもあった。軍歌成立時からの歴史的経緯をたどった研究『日本の軍歌』(幻冬舎新書)を刊行した文筆家の辻田真佐憲さん(30)は、軍歌を断罪でも懐旧でもない国際的視点からとらえ直す。

 近代的軍歌が登場し始めた明治18(1885)年から、敗戦で軍が消滅した昭和20年までの60年間に作られた軍歌は推計1万曲超。辻田さんは軍歌の定義について、戦時歌謡なども含めた「戦争に役立つ歌」という広い枠組みを設定する。その性格上、戦後は忌避されがちだったが、パチンコ店BGMとしておなじみの『軍艦行進曲』(守るも攻むるもくろがねの…)、往年の人気コント番組「ドリフ大爆笑」のオープニング曲の原曲「隣組」(とんとんとんからりと隣組…)など、今でも認知度の高い曲もある。

 現在は軍が国民に押しつけた音楽というイメージが持たれがちだが、歴史的経緯をたどれば、決して一面的な評価は下せないと辻田さんは話す。「そもそも軍歌は鉄道や郵便制度と同じく、近代化の過程でヨーロッパから輸入したもの」。まだ日本人という意識が希薄だった明治初期、近代国家の国民を作るための手段の一つが、軍歌だったという。

 辻田さんが軍歌に興味を持ったのは中学時代。大学生だった平成17年には、世界各国の軍歌を集めたウェブサイトを開設した。世界の軍歌や革命歌などをよく知る立場から、これまでの日本の軍歌についての左右の議論が、ともに国際的な影響関係を軽視していたことに不満があったという。「単純に戦争責任を問うのもチャチな話だし、輸入品の軍歌に日本人の魂を求めるのもおかしい。軍歌は日本だけの現象ではない。世界史の中に日本の軍歌を置くことで、従来の左右の単純な語り口から脱せられる」