【外信コラム】赤の広場で ビッグマックと冷戦 | 毎日のニュース

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 ソ連崩壊前後、モスクワ名物の一つといえばマクドナルドだった。1号店は1990年1月にオープン。共産党政権が崩壊したのはその1年11カ月後である。人々は、資本主義の味を求めて行列を作った。初日には氷点下10度にもなる極寒の中、5千人が並び開店を待ったという。ビッグマック、フライドポテト、コカ・コーラのセットは当時の庶民にとっては高根の花。しかし、店にはあこがれの米国文化に触れようとする人々の熱気があふれた。

 数々の逸話が語り継がれている。並ぶだけのアルバイトも存在したし、ハンバーガー食べたさにシベリアから飛行機でやってきたお金持ちもいたという。

 何よりもマクドナルドの店員の笑顔は、上から目線でお高くとまったソ連式の無愛想な店員たちに変革をもたらした。心地よいサービスを提供することの商習慣は、この店から始まったと言っても過言ではない。

 ウクライナ情勢にからんでロシアの反米感情が広がる中で、マクドナルドが苦難に直面している。1号店は衛生管理に問題があるとして、営業停止に。理由はともかくとして、多くの人が米国の象徴をプーチン政権が標的にしていると感じている。ビッグマックがロシアから姿を消すのなら、それは第2の冷戦が再来するときだろう。決してジョークではない。(佐々木正明)