□帝京大学教授・志方俊之
またもや、中国軍機による「異常接近」である。この8月19日、中国・海南島東方約210キロメートルの南シナ海=中国の排他的経済水域(EEZ)内=で監視活動に当たっていた米海軍P8対潜哨戒機に対し、中国空軍のJ(殲)11戦闘機が異常接近してきて、米国防総省が中国政府に厳重抗議する事態が起きた。
≪習指導部が関わらぬはずなし≫
中国軍機は米機から約6メートルの至近距離にまで接近し、その後、機体下部のミサイルを見せつけるような姿勢で旋回通過したという。米国の抗議の趣旨は当然ながら、この中国機の行動が危険かつ挑発的な威嚇であり、国際的な慣例に合致しないというものだ。
中国政府は「中国軍機は米軍機と安全な距離を保っていた」と強弁し、米軍が中国に対して行っている大規模で頻繁な偵察活動こそが、不測の事態につながる根本原因であると反論している。
このような無謀というほかない異常接近事案が、中国の第一線部隊、軍当局、党中央の、どのレベルに最も強い意図があってのことなのかは、諸説あって確言できない。何事も「愛国無罪」だと許された時代に育ったパイロットたちが、国際法や国際的慣習に未熟なまま操縦桿(かん)を握っているものか。それとも、党中央に対する政治的発言力を大きくするため、軍の上層部があえて国際的緊張を高めているものか。