東日本大震災が起こり、何かできないかと思った。子供たちへの支援活動をする仲間と宮城県名取市の幼稚園へ行ったり、東京などでの朗読公演で被災地に思いを寄せるきっかけになる作品を上演したりした。だが、僕らの朗読公演をそのままの形で東北へ持っていくには時間が必要と思えた。いつの日か、東北で公演をやりたい。
震災から3年がたち、ようやく少し落ち着いてきたとの声が聞こえてきた。それではと、公演準備に入った。報道などで目に、耳にしているが、まずは自分の目で確認したい。下見に出かけよう。
雪解けを待って家人と一緒に車で東北道を北上、宮城県の気仙沼から石巻を回った。その道中、国道を南下すると「ここまで過去の津波の到達地点」と書かれた看板が目に入った。「過去の」とは東日本大震災だ。看板を過ぎると津波が押し寄せた形のままに空き地が広がり、重機でがれきの撤去作業が行われている。脇に見ながら進み、少し登ると再び同じ看板。
そんな光景に何度か出くわし、改めて東北沿岸の地形を思い浮かべたり、津波到達の看板の傍に建つ旧家を見て、すぐそこまで津波が押し寄せた「紙一重」を実感した。カーナビでは存在するはずの道路、鉄道はない。家人と僕は言葉も忘れ、ただひたすら走った。まだまだ復興への道のりは遠いなというのが正直な感想だった。