被災3県で高台移転先の用地取得8割 所有者不明の土地売却制度が成果 | 毎日のニュース

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 東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県で、高台移転先の用地取得が6月末時点で目標の84%に当たる約750ヘクタールに達したことが12日、復興庁の調査で分かった。

 集計を始めた昨年9月の49%から大幅に伸びた。所有者不明の土地を裁判所が選んだ管理人が売却できる制度の活用が成果を上げている。用地の多くで宅地造成が始まっており、住宅建設が本格化する見通しだ。

 県別の用地取得率は宮城が目標の89%の523ヘクタールで、福島が82%の77ヘクタール、岩手が74%の150ヘクタール。復興庁によると岩手は「宅地に適した高台が少なく、用地確保に時間がかかっている」という。

 3県の自治体は、最終的に計約2万1千戸分の宅地を造成する計画だが、平成25年度末時点では841戸分しか完了していない。用地取得の進展を受け、26年度末には累計で約4千戸分、27年度末には約1万1千戸分と造成を加速、住民に宅地を売ったり貸したりして住宅を建ててもらう。

 高台移転の用地取得をめぐっては、登記簿に記載された土地所有者が死亡、相続人の所在がつかめないケースが多く、難航していた。復興庁は、そのような場合に裁判所が選任した財産管理人が資産を処分できる制度の活用を推進してきた。司法書士ら約600人を管理人候補として確保し、選任のスピードを速めて自治体への売却につなげた。

 また、用地調査や地権者との交渉をコンサルタント会社に外注することも推奨。どうしても取得が難しい土地は造成計画から外せるよう、計画変更手続きを簡素化し、早期に着工できるようにした。復興庁は住宅建設増加に備え、建設労働者の宿泊施設整備を促し、人手確保にも取り組む。

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【用語解説】高台移転

 津波被害が想定される地域の住宅や公共施設を高台や内陸の安全な場所に移転する防災対策。国の防災集団移転促進事業として、地方自治体が移転先の土地を取得、造成し、住民に宅地を売却、賃貸する。東日本大震災の被災地では、自治体負担は実質的にゼロとなる。これとは別に、家の自力再建が難しい被災者向けの賃貸住宅を、自治体が国の補助を受けて整備する災害公営住宅がある。