【おやこ新聞】コラム・養老先生のさかさま人間学 生きるっておもしろい | 毎日のニュース

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 ■描 ヒトだけの表現って?

 みなさんは絵を描くのが好きでしょうか。わたしは嫌いじゃないんですが、下手なんです。絵が下手なことには、自信があります。

 小学生の時に絵を習いに行きました。描いた絵を家に持って帰ったら、家族で議論になりました。下手なのは子どもだから当然だとしても、太陽がむらさき色に塗ってあるので、これはヘンだということになったのです。それで自信をなくしたのかどうか、よく分かりませんけれど、以来、あまり絵は描きません。

 絵を描くのはヒトだけではないようです。チンパンジーも描きます。でもヒトの描く絵とちがい、なぐり描きのように見えます。何を描いているのか、専門家でないと分かりません。わたしの絵はそれよりマシです。

 昔の人が描いた絵が、スペインやフランスの洞窟で見つかっています。狩りの絵が多いのですが、とても上手です。こういう上手な絵、つまり芸術的な絵を描くことができるのが現代人ですが、それ以前の、例えばネアンデルタール人は、そうした上手な絵が残っていません。

 絵を描いても、あまり実用にはなりません。洞窟の壁にシカの絵を描くのなら、実際のシカをつかまえてきたほうが役に立ちます。絵を描くような、直接には役に立たないことをするのが現代人の特徴ともいえますね。