【書評】『【論集】日本の安全保障と防衛政策』谷内正太郎編 | 毎日のニュース

毎日のニュース

今日の出来事をニュース配信中!

南西諸島の防衛強化は急務

 オバマ米大統領が「米国は世界の警察官ではない」と宣言したことで、米国による軍事介入のハードルは上がったとの認識が世界的に広がり、ウクライナやイラク、南シナ海などで地域紛争が多発している。こうした中で、日本周辺のみならず、イランやインド洋、南シナ海にまで視野を広げて日本の安全保障上の課題を探る時宜を得た論集だ。

 南シナ海では中国の進出により、ベトナム、フィリピンとの対立が深まっている。なぜ中国は南シナ海を制圧しようとするのか。海底に眠るエネルギー資源の獲得、海上交通路の安全確保という動機はたしかにあるが、軍事的な要因も大きい。中国は水深の浅い東シナ海ではなく、南シナ海に弾道ミサイルを積んだ原子力潜水艦を配置しておくことで、米国に対する核抑止力を確保しようとしている。米国としてもこの動きを座視するわけにはいかず、南シナ海への関与を強め、この地域での緊張は高まっている。もちろんこれは日本の安全保障と無縁ではありえない。

 また「中国が尖閣諸島の奪取を断念することはあり得ない」のが現実で、南西諸島全般の防衛強化は極めて重要だとして、こうした島々に「民間」人が押し寄せた場合、政府公船が侵入してきた場合、海軍艦船が侵攻してきた場合の課題を検討する。その上で離島防衛を全うするためには防衛費の大幅な増額に加え、新たな立法措置が必要であり日米同盟も強化しなければならないと強調されている。