【中高生のための国民の憲法講座】第54講 国柄があいまいな日本国憲法 高乗正臣先生 | 毎日のニュース

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 今日、「国」あるいは「国家」という言葉は、極めて曖昧(あいまい)に用いられています。たとえば、被災地の復興について「国は何もしてくれない」とか「国家を相手に訴訟を起こす」などという場合があります。そこでの国ないし国家というのは、「統治権力機構としての政府」(stateあるいはgovernment)を意味します。

 これに対して、「国を愛する」「国を守る」とか「国家のために力を尽くす」などという場合、そこでの国ないし国家は「政府」ではなく、共通の歴史、宗教、伝統、文化を持つ人々の「歴史的な国民共同体」(nation)を意味します。nationとしての国は「共通の祖先、文化、言語などを持つと信じている人々が作り出した集団」であり、過去、現在、未来にわたる永続的な生命の共同体といえます。この2つが混同して用いられているのが現状です。

 

2つの意味

 憲法という語には2つの意味があります。本来(固有)の意味の憲法と近代的意味の憲法といわれるのがそれです。憲法を意味するコンスティテューション(constitution)、フェアファッスング(Verfassung)という語は、もともと構造とか構成、組織、体質という意味があり、その国固有の統治のあり方(国柄)やそれが形成されてきた政治的伝統、文化を反映した言葉です。ここでは、右の「歴史的な国民共同体」が前提になります。