川端康成の若き日の恋文発見 「ある非常」別れ告げられ… 作品背景実証の貴重な資料 | 毎日のニュース

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 ノーベル賞作家の川端康成(1899~1972年)が暮らした神奈川県鎌倉市の自宅から、初恋の相手とされる伊藤初代(1906~51年)と交わした書簡計11通が見つかったことが8日、分かった。相手への思いを綿々とつづった文面は若者の純愛を伝え、川端作品の背景を実証する貴重な資料となる。

 11通のうち10通は初代から川端宛て。1通は川端が初代宛てに書いた未投函(とうかん)の手紙だった。初代は東京・本郷のカフェで働いていたが、岐阜県の寺の養女となった。大正10年、22歳の川端と15歳の初代は婚約。しかし初代は「ある非常」を理由に約束を破棄する。

「何も手につかない」「夜も眠れない」

 川端による未投函の手紙は約700字。初代からの返事が遅れていることについて「恋しくつて恋しくつて、早く会はないと僕は何も手につかない」「本当に病気ぢやないのかと思ふと夜も眠れない」と切実な思いを記した。書いた時期は不明だが、文面から10年10月下旬以降とみられる。

 一方、初代が手紙を書いたのは同年9月から11月にかけて。10月下旬までは「私の様な物を愛して下さいますのは私にとってほんとうに幸福なことです」とつづるなど、信頼と愛情で結ばれた関係を示していた。