「受賞リストに加わり光栄」日仏翻訳文学賞授賞式で朝比奈弘治教授 | 毎日のニュース

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 日本とフランスの優れた翻訳作品に贈られる第19回日仏翻訳文学賞の授賞式と懇親会が12日、東京都内で行われた。仏作家ジュール・ヴァレス(1832~85年)の小説『子ども』(岩波文庫、上下巻)の日本語訳で賞を射止めた明治学院大学の朝比奈弘治教授(62)は「(過去の)受賞リストには本当に大きな仕事が並んでいる。その中に加えていただいたのを光栄に思います」と喜びを語った。

 受賞作『子ども』は、厳格な両親のもとで青年へと成長していく仏人少年の姿がユーモアと皮肉を交えて描かれている。19世紀にパリで樹立された労働者による自治政府「パリ・コミューン」の立役者の一人として知られるヴァレスの自伝的小説。少年の豊かな感性を伝える、平明でリズム感あふれる日本語訳は「原文とつかず離れずの絶妙なポジショニングで、とても読みやすく、読み応えもある」(選考委員の澤田直・立教大学教授)と高く評価された。

 「中身は古くないし、語り口も生き生きしている。こんなに面白い作品を日本の読者があまり知らないのはおかしいと思った」。受賞あいさつで、20年近く前に原書で読破したときの心境をそう語った朝比奈さん。「翻訳は一般的には地味で単調な作業です。でもこの作品の場合は、語りの力が強烈で、語り手と一緒になって日本語を語っているように感じる楽しい瞬間が多かった」と話し、今後も仏文学の翻訳と紹介を続けることを誓った。