【書評】『増補 大衆宣伝の神話 マルクスからヒトラーへのメディア史』 | 毎日のニュース

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 ナチスは、ヒトラーやゲッベルスの天才的な宣伝術によって大衆を操り、政権を奪取した-。

 広く流布したイメージだが、実は「神話」である。政権獲得前のナチスの宣伝力は過大評価されており、その手法も先行するドイツ社会民主党(SPD)に多くを負っていた。19世紀の宣伝革新者SPDはデモや新聞、漫画など政治動員の新メディアで大勝利を収めたが、古い成功体験に固執したため、新興のナチスに後れを取る。

 メディア史の名著の、22年ぶりの復刊。安直なデモ礼賛論など動員メディアへの幻想がはびこる今、改めて読むべき一冊。(佐藤卓己著/ちくま学芸文庫・本体1500円+税)