【聞きたい。】フォトジャーナリスト・林典子さん 『キルギスの誘拐結婚』 | 毎日のニュース

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 ■非人道的な慣習と「女性の生き方」

 「キルギスの人がこの本を見ても、きっと納得してくれると思います」

 中央アジアのキルギスには、独身男性が若い女性を無理やり連れ去って結婚を強制する「アラ・カチュー」という慣習がある。違法行為なのだが、いまも被害が相次いでいる。その実態について現地で取材を重ね、フランスで開かれた報道写真の祭典「ビザ・プール・リマージュ」の報道写真企画部門で金賞を受賞したシリーズを写真集にまとめた。

 「明らかに人権侵害ですし、もし自分が…と思うと一人でも被害者が減ってほしいと強く思います。でもセンセーショナルに捉えると、たとえば『キルギスって最低の国だ』とか、印象だけで終わってしまう。そうではなくて、連れ去られた女性はどうして結婚を受け入れるのか、家庭生活に入ったあとはどうなるのか。そういうことも知りたいと思いました」

 写真集には、たとえば、男たちが嫌がる女性を連れ去る現場を捉えたシーンがある。泣き叫ぶ女性。押し込まれた車内の様子まで。インパクトのある写真だが、それは「誘拐結婚」の半面でしかない。ページを繰っていくと、むしろ、家に連れてこられた女性を男の家族が説得する場面など、静かなシーンが胸に響いてくる。

 「女性の生き方という視線でこの慣習を見つめたいと思ったし、写真集を編集するときは、それを意識しました」