■「体内時計」回復で病を防ぐ
自分の身体について、わたしたちはほとんど何も知らない。
身体の不思議について慄然としたことがある。以前、前立腺がんの治療でホルモン治療をしたら、性欲も消失してしまった。なるほど、性欲の源はホルモンであったのか。妙な言い方だが、わたしというものを特徴づけている欲望のひとつは、実はわたしの知らないわたしだった。
わたしたちが「こころ」と言っているものの正体も、随分あやふやなものである。それは脳の中にあると漠然と考えていたが、本書によれば人の体のなかにある60兆個の細胞がネットワークをつくることで「こころ」の仕組みがつくられているということだ。だとすれば、指先にだって「こころ」は宿っている。身体で考えるという先人の技法も、故なきことではなかった。
本書には、「生命時計」に関して、身体とこころの不思議をひもとく知見がちりばめられている。体内時計(正しくは生体時計というらしい)という言葉は知っていたが、まさか人間の身体の中に時計遺伝子が埋め込められており、それが規則正しい時を刻んでいるなんて!