スペインは自分たちが犠牲となった惨劇を受け入れられなかったのだろう。前大会王者で史上最強ともうたわれた“無敵艦隊”が、オランダに1-5で撃沈。誰も予想しなかった結果に興奮の収まらない会場を背に、選手は足早にロッカールームへと引き揚げた。
前半27分にシャビアロンソのPKで先制するまでは狙い通りだった。しかし、前半44分にファンペルシーに同点ゴールを決められて流れを失う。ロングボールをファンペルシーとロッベンに集めるシンプルな攻撃に対応できず、後半だけで4点を失った。
気がかりなのは、セルヒオラモスとピケで組むセンターバックのスピード不足だ。DFラインの裏を突く動きに対応できずに招いたのが3失点。ライバルの標的となるディフェンディングチャンピオンだけに、今後も弱点を執拗に突かれることになるだろう。
前回の決勝と同じ顔合わせとなった今大会の初戦で、健在をアピールするはずがまさかの大敗。落ち目という評価に「私たちは何も恐れていないし、現在も全盛期にある」と反論していたデルボスケ監督も、「なぜ5失点も喫したか分からない」と茫然自失だ。
前回も1次リーグ第1戦でスイスに敗れてから、破竹の勢いで頂点まで駆け上がった。傷心の指揮官も「勝ち点3を失っただけで私たちには経験がある」と努めて前を向く。しかし、初戦の黒星を吉兆ととらえるには、あまりにも絶望的な敗戦である。(奥山次郎)