【サンパウロ=奥山次郎】ブラジル・スコラリ監督の粋な計らいだった。3-1の後半43分に交代を告げられたネイマールがゆっくりとベンチに下がると、6万2103人のサポーターで埋まったスタンドからは大歓声が上がる。自国開催のW杯初戦で2ゴール。誰もが認めるこの日のヒーローだった。
前半11分に左サイドを崩され、マルセロのオウンゴールで先制を許す。マルセロの目はうつろで、チームメートも呆然と立ち尽くす。よもやの展開となったことへのショックはありありとうかがえたが、22歳の若きアタッカーが嫌な流れを断ち切った。
攻め続けて迎えた前半29分だった。中盤でボールを持ち、相手DFのタックルをかわす。目の前にスペースを見つけると、ペナルティーエリアの外から左足を一閃。ボールは右サイドをポストをたたいてゴールに吸い込まれ、逆境のブラジルが息を吹き返した。
後半26分のPKも決して簡単ではなかった。優勝を義務づけられる大会の初戦で、勝ち越せるかどうかの重圧は計り知れない。その責任を負わなければいけないのが王国のエース。思い切りよく放ったシュートはGKプレティコサの手をはじいてネットを揺らした。
晴れやかの表情で会見場に姿を見せると、「とてもハッピーだ。本当にハッピーだ。2ゴールでチームを助けることができた。何よりも勝てたのがうれしい」と大はしゃぎ。まだまだあどけなさも残る細身のスターが、大会の主役へいきなり躍り出た。